短編棚M

将棋では勝てません!
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「あっ、しま ・・待っ」
「甘いね、桜。 隙だらけだよ」
「なぁんで待ったさせてくれないのぉぉ!」
「何でって・・・最初からそういうルールじゃないか」


テレビの前の絨毯の上で、赤司君と将棋中。

私はうつ伏せで絨毯に肘をついてカチカチと。
因みに赤司君は胡坐で打ってる。

てか負けっ放しのくせに、とことん相手する私ってどうなの

いや、どうもしないけど。
待ったくらいつけてくれても・・いいんじゃないかな、


「だって赤司君、将棋強すぎー」
「よく言うよ。 桜も麻雀、現在17連勝中なんだろう?」
「麻雀はねー あれは運ゲーじゃん?」


それに比べて、将棋なんて頭脳ゲームじゃん?

相手がどう来るとか、まだパターン読めないしなぁ
よくて5手先。 けど赤司君は20手先くらいまで見えていそう

・・・だから勝てないのか・・っ
パチパチと静かに手が進む将棋板の上


「・・でも桜は、頭いいだろう?」
「あー、まぁいい方ではあったよ。 学年15位以内だったし」
「1位や3位じゃないところが桜らしいな・・」
「あ、それ褒めてんのー?」


5位も取ったことはあるけど、学年トップ3人は
最後の最後まで変わらなかったしなぁ・・私の学年

まぁそれ差し引いても、高い方では・・あったような気がする

あ、金将取れた


「桜は将棋覚えたの、結構最近だろう?」
「んー、そうだな 半年前くらいか」
「最初よりは強くなってると思うぞ。 そう思う」
「あ、よかった。 全然弱いとか言われたらどうしようかと」


苦笑いしていたら、「そんなはずあるわけないだろう」と
さらりと返されてしまった。 その断言力? はどこから。


「うー、でもそろそろ勝ちたいなぁ・・」
「僕に勝とうなんて20年早い」
「何それ、きっつ! 絶対1年以内に勝つ」


負けっ放しも悔しいじゃん・・・!
片手をグッ、と握り拳作ったら いつもより不敵に笑う赤司君


「・・・言ったな?」
「お、おう。 言ったよ・・?」
「その発言、後々に後悔させてやろう。 王手」


パチンッ と駒を打つ音。
王将の右斜め上に4マス進んだところに成った角が置いてあった。


「えっ、あ! えっと、こっ、こうだ!」


王将の右斜め上に持っていた金将を置く
そのまま取られるルートは、避けた。 はず


「迷わずこう打つ。」
「え、あ ・・っあー!」


王将の範囲内に来た角を取ろうとしたら、
角のずっと左に飛車が待ち構えていた。

これは・・・・、詰んだ


「・・・参りました」
「だろうな。」
「あー、もう何で赤司君 そんなに強いの?」


うつ伏せていた体を起こして、背伸びをする。
あーあ、何連敗中だろう

やるたび負けてるし、現在30敗くらいかな

緑間君とも打つけど、緑間君も強いし?
素人目で見ると、やっぱ赤司君の方が強いなとは思う

何て言ったって即効で一局が終わる。


「桜と言えども、そう簡単に勝たせたくないからな」
「ぜーったい1年以内に勝つー!」


叶うかどうか分からない課題だなぁ
そのまま絨毯に、背中からごろり

駒の動きはとっくに覚えてんだけどなぁ・・・
やっぱパターン読みかなー、

んー、と悩みつつ目を瞑る。

目を瞑っていても多少差し込む光が、
急に暗くなって思わずバチッと目を開いた


「・・起きていたのか」
「今の今まで将棋してたから」


私の隣でしゃがんでいる緑間君
真上に緑間君の顔があったのはちょっとビックリした

いつの間に居たんだろ


「やぁ、真太郎。 相手していくか?」
「今日は遠慮しとくのだよ。 頭痛が少しな」
「頭痛!? 風邪じゃない!?」


思わず起き上がったら、緑間君の頭部が後ろに避けられていた。
危ない。 今のはおでこごっつんとかあり得た。 危ない。

ってかそうじゃない。

片手を自分の額に当てる。 その後すぐに緑間君の額に手を当てる


「熱はないのだよ」
「そりゃぁ、ね。 気付かないほどバカでもないでしょ
 あ、因みに赤司君は意外と気付かないタイプなんだよ。」


知ってた? と本人の前でからかうように笑う。


「・・・言うな、桜」
「意外すぎるのだよ、赤司・・」
「んー、ま。 とりあえず緑間君 今日夕飯持ってくわ」
「・・・ありが、とう・・ っ、なのだよ!」


ふと呟くように漏れた声に、赤司君と2人で目が丸くなった。

・・・ちょっと待って、最後無理矢理なのだよ つけたの、
照れ隠しのつもりですか 緑間君。 隠せてないんだけど



(み、緑間君が自らデレた!)
(・・・デレたな、真太郎)
(えー? 何、真ちゃん久々にデレたー?)
(う、五月蝿いのだよ! そして高尾来るな!)

(あ、緑間君ー お粥にしとく? 普通に食べる?)
(普通に食べるのだよ。 食欲はある)
(え、何 真ちゃん風邪? りんごあるけど持っていこっか?)
(バナナなら僕の部屋にもあるよ)




 

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