短編棚M

だって、定番じゃん?
1ページ/1ページ






実はここのマンション、ロビーの端に
カーテンの掛かったある入り口がありまして。

その先には大浴場に繋がってます。


「んー、サッパリした」


現在その大浴場から出てきた後。

薄い青色の浴衣着て、横髪を後ろにかき上げた
まだ髪の毛湿ってるなぁ・・・


「おっ、桜ねーさん こんばんは!」
「高尾君、 緑間君も」
「・・こんばんは」


ソファに座って、手をぶんぶん振る高尾君
緑間君はその隣に座って、小さく会釈してた


「桜ねーさんも大浴場行ってたんすか?」
「そう。 ストバスの大会、同級生に連れられてさぁ」


もー汗びっしょりで。
苦笑いして上に伸ばした右腕を、左手で左に少し逸らした

ってか2人も、浴衣だ
「も」って言ってるし、2人も入ってきたと解釈

あ、何か手元にトランプを持ってる


「何やってたの?」
「あ、これ? 今2人でババ抜きしてるんすよ。
 人数居なくて、ちょっと味気ねーけど」


持っている数枚のトランプを、手元でひらひらさせている高尾君
メガネをくい、と持ち上げて 小さい溜め息の緑間君


「紅咲、高尾が弱すぎるのだよ」
「なぁ!? ちょっ、桜ねーさん手ぇ貸してよ!」
「え、 力になれるかは分かんないよ」
「桜ねーさんなら大丈夫!」


何が大丈夫だ。 呼ばれるがまま、高尾君の真後ろへ。
ソファーの肘置きに、腕を置いてしゃがんだ


「あれ、ババ持ってないじゃん」
「そうなんだけど、最後の最後で俺が引いちゃったりすんだよなー」


軽快に進み、緑間君の手持ちは2枚。
因みに高尾君は1枚。 何この勝負の分かれ道


「まぁたこのパターンかよぉぉ・・・」
「気持ち分かるから、背もたれにしないでー」


ぐでー と真後ろに逸れた高尾君が私の肩に。
・・ちょっと重いよ、高尾君

凭れた高尾君の背中で腕の置き場がなくなってしまって、
とりあえず高尾君の首に置き場のない巻きつけた

ついでに私の顎は高尾君の肩


「ちょっ、桜ねーさん何やってんすか」
「え、いや 別に何も?」


これが一番腕置き場としては最適、げほっ

高尾君はトランプ構えたまま、少し顔を逸らした

さて、緑間君の手持ちどっちかがババかぁ・・・、んー
手を伸ばして、トランプを直感的に片方引く

捲ったトランプは、


「いよっし! あっがり!」
「・・・って! 今のは高尾が上がったんじゃなく、
 紅咲が上がっただけなのだよ! 高尾起きろ!」


残ったジョーカーを机に叩き付け、私の肩の上で・・
・・寝てた? らしい、高尾君の体がビクッと揺れた


「ッハ・・! ヤベ、 半分くらい寝てた。」
「随分お疲れのご様子で」


苦笑いして乗せていた腕を解く

手持ち1枚でババ抜き終わりとなった、
緑間君の手元はジョーカーが顔を見せていた


「あれ? 桜ねーさん上がったの!?」
「そう。 どうよ」
「桜ねーさん、マジ尊敬するわ・・!
 明日の朝のチャリ、俺乗る側だ!」
「だから今のは紅咲が上がっただけなのだよ!」


ぎゃいのぎゃいの騒ぐ2人を見つつ、ロビーの端に
セットされてるコーヒーメーカーに手をかけた。

伏せてあるカップを手に取り、メーカーのボタンを押す

そしてその左手の、壁の奥から人影。


「あれっ、赤司君も今日は大浴場だったんだ」
「桜か・・そういう気分だったんだ。
 あぁ、ついでに僕にもコーヒー入れてくれないか」
「はいはーい。 ちょっと待ってね。 いつもの?」
「いつもの」


今日はやたら浴衣率(=大浴場の入浴率)が高い。

さっきもさつきちゃんが入ってったのとすれ違ったし、
入る前にリコちゃん含む、浴衣姿の誠凛の皆ともすれ違ったし。

あ、いや 普段使われすぎてないだけなのかも。
私も大方自分の部屋で済ませちゃうや

コポコポというコーヒー作る独特の音と、
相も変わらずギャーギャー聞こえる後ろのBGM


「・・・あの2人は何で揉めているんだ」
「何かババ抜きで、高尾君が上がれば
 明日の朝のチャリアカー 緑間君が引く話だったらしいよ」


簡単に緑間君に勝てるとは思えないから(高尾君ごめんね?)
何らかのハンデはあったかもしんないけどー、

と言う予測を立てた独り言を呟くと、即効で
「それだけじゃないだろう」と返事が返ってきた。

流石赤司君だわ、よく分かってらっしゃる。


「いい加減にしろ、2人とも。 騒々しいぞ」
「赤司聞けよ! 真ちゃんがなー、負け認めてくんねーの!」
「紅咲には負けたかもしれんが、高尾には負けていないのだよ!」
「低レベル・・・」


そう呟いたのに、緑間君からキッと睨み付けられた
おー、怖い怖い。 ごめん、怖くない。

ふむ、と顎に手をつける赤司君。

あ、これは突発案来るぞ。


「じゃぁ、ダブルスの卓球やろうか」
「「何で(なの)だよ!?」」


的中☆ 因みに今ハモったのはババ抜きしてた2人。
予測ついてたし、驚きはしなかったけど。

けど、ダブルスってことは・・・あれ?
私含まれてんの?


「大浴場後、浴衣で4人集まってると言ったらそれしかない。
 というか単に卓球をやりたい気分だ」
「何つー横暴! いや、楽しそうだからいいけどさ!」
「このマンションには何で卓球台まであるのだよ・・・」


小さく溜め息をつきつつ、まぁ否定はしない緑間君
(多分オヤコロ恐れてる。)

そして赤司君は笑って、少しこっちに目を向けた


「さぁ? 何でだろうね・・・ねぇ、桜?」
「言っとくけど、卓球台に関しては私 関係ないからね」


何も知らないからね。
念を押して、出来上がった牛乳割りコーヒーを赤司君に手渡す。


「ありがとう」
「ダブルスならチームどーすんの?
 俺個人的には誰でもいいんだけど」


赤司と桜ねーさんはフツーに強いしー
真ちゃんはうちのエース様だしー(バスケ内でだけど)

って語尾延ばしながら呟く高尾君。

その後赤司君が、不意に少し悩むように俯いて。


「・・・桜、僕と組ま」
「最強コンビすぎるからダメなのだよ!」


緑間君の即答。 何てこったい
赤司君となら勝てる可能性あると思ったのに


「勝率で言ったらどう考えても赤司君だよねぇ・・」
「でも桜ねーさんも、赤司に負けないくらい強いっすよ」
「あっはー・・・高尾君買い被りすぎ」


うん、私が最初に変な笑い方をするくらいは。
うーん、このままだとしばらく決まらないな

左手に持つコップに、口をつけて
空いている右手をひらりと見せた


「ここは公平にグッパーでしょ」
「・・・いいだろう」


そして急に浴衣の袖をまくり出す、赤司君と高尾君。
おい、待て まだ卓球台出してないのに 何そのやる気。


「個人的には桜ねーさんと・・・!」
「赤司か紅咲ならどっちでもいい気がするのだよ」
「あ、俺 もしかしてこん中で一番お荷物なタイプ?」





(桜ねーさん狙い、2人も居たのに
 何であえての真ちゃんなの!?)
(・・・解せぬ。 眼使えばよかった・・)
(いっそのこと、コンビトーナメントは?
 私・緑間君VS高尾君・赤司君 やってから
 私・高尾君VS赤司君・緑間君みたいな)
(赤司と紅咲タッグが優勝っていうのが目に見えるのだよ)


(わ、凄く盛り上がってますね。 トーナメント戦でしょうか)
(やべぇ、俺間近で見たい。 黒子、降りよーぜ)
(そうですね、行きましょう。
 頼んだら飛び入り参加くらいは できそうですね)
(おい、お前はあれを見て 生き残れると思うのか?)





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ