短編棚M

夏祭り行きましょう!
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「お姉さん、1回300円だよ」
「お願いします」


毎度、と言う屋台のおじちゃんを横目に
置かれている射的の銃を持った

今回のメンバーは紫原君、緑間君、さつきちゃん、私の4人
因みに全員着物。


「桜ちゃん頑張って!」
「紅ちん、紅ちん! お菓子詰め合わせ!」
「紅咲! 3段目のマトリョーシカをだな
 明日のラッキーアイテムなのだよ!」
「紫原君に緑間君、待った。 そんなにいっぺんには取れない」


射的の銃を構えて、右目を瞑る。

隣で頑張れ、頑張れと小声で呟くのを繰り返している
さつきちゃんを見て、笑ってから一発目。

撃った。 当たり。


「紅咲・・!」
「まずは緑間君のねー」
「桜ちゃん流石! かっこいい! 素敵!」


マトリョシカはそこそこ重いし落ちるとバラけるからか、
札でマトリョシカと書かれていた物を撃ち落とした

一瞬笑った緑間君の顔は忘れない。


「むぅ・・紅ちーん お菓子詰め合わせはー?」


そして今度はこっちが膨れてしまった。


「次当てるからもう30秒我慢してー」
「! だから紅ちん好き!」
「あ、何かさらりと告られた ってい!」


パンッ と当てたのはお菓子が詰められたであろう、
ビニール袋の上の、ゴム辺り。

事前に、当てるだけでいいよ と言ってくれた
屋台のおっちゃんの判定も出て。

当てたお菓子詰め合わせを受け取って、そのまま紫原君に。

満面の笑みで受け取る紫原君と、隣でそれを見るさつきちゃん


「紅ちんからのプレゼントだぁ」
「桜ちゃんからのプレゼントいいなぁ」
「さつきちゃんー 今これ当てたけど居るー?」
「え?」


3発打ち終えて、台に銃を置いて
屋台のおっちゃんから最後に貰った丸い筒。

受け取った丸い筒を、そのまま紫原君の
隣に居るさつきちゃんに手渡した。


「これ、なぁに?」
「万華鏡。 さっきちょっとだけ見たけど、綺麗だったから」
「えっ、桜ちゃんが当てたのにいいの!?」
「いーよ、さつきちゃんにあげちゃう」


受け取ったさつきちゃんは パァァって
効果音がつくかと思うほどめっちゃいい笑顔で笑って。

「桜ちゃんありがと!」っていう言葉伝えて。

数メートル先に居る紫原君と緑間君の方に、
私の腕掴んで小走りで走ってった。 え、私の腕掴んで?


「見て! 桜ちゃんからプレゼント貰った!」
「ちょ、さつきちゃん 今ゲタだからあまり走らない方が」
「万華鏡! むっくん、ミドリン 見て!」


この子聞いてないわ。

さつきちゃんのご機嫌な声に、振り向いた緑間君と紫原君。
凄く嬉しそうに万華鏡見せるさつきちゃん見て、ちょっと笑った。

たかが万華鏡、されど万華鏡 って奴かな。


「桜ねーさんっ」
「わっ」
「きゃ!?」


背中からがばっと誰かの胸板と聞きなれた声。

突然のことでよろめいたら、さつきちゃんも巻き込んでしまった。
ごめん、さつきちゃん 悪気はない、後ろのこの子がね。


「ちょっとちょっと、高尾君!
 ごめん、さつきちゃん 痛くなかった?」
「び、びっくりした・・! 私は大丈夫だよ」
「ごめんごめん! 4人の姿見っけたから思わず!」


へへっていつものように悪びれることなく笑う
高尾君は本日も通常運転らしい。

因みに高尾君も着物。


「あ゛ー! やっと高尾見つけた!!」
「ここに居たんですか。 高尾君、突然走り出すんですから」
「あら」


誠凛1年コンビのご到着。
あれ、なんか大人数になってきた。


「高尾君は、かがみんとテツ君と一緒だったの?」
「そー! 最初は俺も真ちゃんと一緒に行動してたんだけど、
 俺が金魚掬いに熱中してたらはぐれちゃってさぁ」


あははー、って高尾君が一しきり笑ってる姿見てると、
黒子君によかったらどうぞ、と渡された缶のオレンジジュース。

火神君は紫原君と緑間君と雑談してる。


「あっ、つーか見てこれ! 大漁だったぜ!
 ヨーヨーもめっちゃ取ってきた! プレゼントしちゃう!」
「高尾君、釣りゲーム得意だね」
「こういうとこだけ器用なのだよ・・・」
「まぁね。 ほい、真ちゃんにもさっちゃんにもプレゼント」


一通り金魚とヨーヨー手渡して、私にも回ってきて
ありがと、と添えたらいーえっ、って明るく帰って来た。


「ねーねー、紅ちん そろそろ花火の時間じゃない?」
「え? ・・・あ、本当だ。 そろそろ移動しよっか?」
「あっ、桜ちゃん! 私、すっごくいい隠れスポット知ってる!」
「さつきちゃんでかした!」


こっちこっち! と人で賑わう屋台の間を大人数ですり抜けていく。

数分ほど歩いたところに人気のない、淡い光が漏れる神社の階段。
20段ほど上った辺りでさつきちゃんがくるりと振り向く。


「ここです! 打ち上げ場所はあっち!」


そして上って来た階段の方角に、潜った鳥居の上の方を指差した。


「うお、全然いいんじゃね?」
「しかも打ち上げ場所からそう遠くないし、音も綺麗に届くよ!」


淡い光を放つ街頭。 鳥居の上の空を見上げてた。
そして1回、口笛。


「いつも花火見てるとこ、人多くてあまり好きじゃなかったんだ」
「俺もなのだよ」
「じゃぁ今年からは是非ここで!」
「さつきちゃん、売り込み上手ね」


顔の横でピースやったさつきちゃんに並んで、同じくピース。
矢先着物の袖の裾が、つんつんと引っ張られた。


「紅咲さん、紅咲さん 隣座ってください」
「!? あっ、え テツ君の隣か、桜ちゃんの隣か・・」
「じゃー俺は桜ねーさんの後ろー!」
「座る、座るから黒子君 あまり引っ張らないで」


引っ張られるがまま黒子君の隣に座り、
さつきちゃんは苦悩の末、黒子君の隣に腰を下ろした。

高尾君の隣に緑間君が座り、
更にその後ろに紫原君、火神君が座る形に落ち着いた。

階段結構広いのに、詰め詰めね。

少し雑談すること数分、

ひゅるるる、とした音と共に空に1つの花


「おっ」
「わっ、きれー!」


何十発か空に打ちあがり、ほぅ、と少しの余韻に浸る。
うーん、これぞ夏の風物詩。



(そーだ、ケータイで花火撮ろ)
(紅咲さんのケータイのカメラ性能、凄いですからね)
(私も撮る! 桜ちゃん、綺麗に撮れたら画像ちょうだい!)
(全然いいよー さつきちゃんも綺麗なの撮れたらちょーだいね)

(・・・・桜ねーさん、見て。 すげーの撮れちった)
(どれ、 っわ、何これ綺麗! 高尾君が撮ったの凄く綺麗!)
(全く騒がしいのだよ。 おい、それを俺のケータイに送るのだよ)
(ブハッ、何その意味ないツンデレ!!)





 

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