短編棚Km

大得意とか羨ましい!
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朝早めに家を出て、朝練前に昨夜書いておいた
ノート1枚を靴箱に置いてから体育館へと走り向かう。

月曜日。

週明け早々のハードな朝連に、
1時間目はほとんどぐったりだった。

因みに朝練終わった後の靴箱覗いたら回収されてた。
秋サンのお返事、帰りには来るかな。


「・・・お疲れのご様子で」
「あー・・紅咲か・・」


窓側を向いて項垂れている俺は、
右側から聞こえた声でその主を確認した

苦笑いをしたような息を吐く音が聞こえた。

後ろで普通に2時間目の教科書の用意をする緑間が解せぬ
お前も疲れろよ! 俺の体力がねーの!? 嘘だろ!


「・・って言う元気もねぇ・・・」
「? ところで高尾君、飴は好きかな」
「おー? 好きよ」
「手。 あげる」


窓側に顔を向けてうつ伏せたまま、
右手を伸ばしたら手の平に小さい袋がのってきゅっと握らされた

左手に持ち直して顔の前まで持ってくる


「緑間君と佐藤さんにもあげるね。
 適当に選んだものでもいい?」
「あ、私は何でもいいよ」
「俺もなのだよ」
「ん、どーぞ」


そんな会話の中で、視界に入ったのは
窓とそのバックに写る青空。 オレンジ味の飴の袋。

手にぐっと力を入れて、
やっとの思いで顔を上げて後ろを向いた


「真ちゃんと佐藤さん、何味貰ったー?」
「メロン味なのだよ」
「りんご味でした。 りんご味好きなので嬉しいです」
「本当? よかった」


授業始まるけど食べても平気かなー と言いつつ、
いちご味の飴の袋を破く紅咲は食べる気満々らしい。


「紅咲ー それ食ったまま当てられたらどーすんの?」
「んー? 端っこにでも寄せて答えるよ」


そう言い切った紅咲は口の中に赤い飴を1粒放り込んだ。

あ、食べた と横から言ったら
放り込んだその状態のままちょっと停止して。

口元に人差し指を当てて笑った。
内緒ね とでも言いたそうな笑い方だな、俺には分かるぞ


「てか紅咲、ゲームの方どうなってんの?」
「んぅ?」
「作る方」
「ん、あー あれ」


気にかけてくれてんだ って小さく笑いながら
背伸びをした紅咲に まーね、と答えた。

背伸びし終えた紅咲は、自分の机に両肘をついて欠伸をした


「それが数日では早々進まないんだよねぇ。 初心者だし
 後さ ワールドマップがもうラスボス」
「あー、確かに広くてめんどそー。 ・・そんなしんどいの?」
「っていうか普通に素材が足りないよね。
 後イマイチマップの距離感が掴めない」


イメージはあるんだけど、と適当に捲られたメモ帳が
机の上に放り投げられて慌ててキャッチ。

雑にグシャグシャッと書かれたその絵は
何度も書き直した跡があって、それが何枚も続いていて。

頑張ってんなぁ、っていうか。
・・熱心だな、っていうか、さ

そのメモ帳をまた放り投げて紅咲に返した


「ま、いーんじゃね?」
「よくないよ、進んでないもの」
「いーじゃん、そんだけ真っ直ぐ頑張ってんだからさ。
 絶対そんだけ紅咲に返って来るって」


キャッチしたメモ帳で口元を隠してる紅咲は
ちょっと目線を泳がせて、 本当? と聞き返してきた。

おう、と言えば 少しの空白、そっか と短い返事。


「そういや何RPG作ってるんだっけ。 2D?」
「そう、2D。 ってあれ、言ったっけ?」
「んーん、何となく。 そっかー
 秋サンもRPGは2Dが慣れてるって言ってたなー」
「秋さん?」


眉を寄せて首を傾げた紅咲に、あれ って素で呟いた。
言ってなかったっけ、というか紅咲にどこまで言ったっけ


「手紙のー この間言ってたあれ」
「あー、あれ。 ・・・まだ続いてるんだ」
「そ、その人の呼び名が秋サン。 あ、そういやさ
 紅咲は何のゲーム好きなの? RPG作ってっけど」


まだ聞いてないよな、と思いつつ。
紅咲は机にメモ帳を置いて俺の方を少し向いた


「何でも好きよ? RPGは無論、ノベルゲーも
 音ゲーもパズルゲーもやるし。 テーブルゲームも好き」
「すげぇ範囲ひれーな。」
「蛇足だけど最近ゲーセンのドラムが気になるの・・・」


スティック振る真似をした紅咲に、思わずぶはっと笑った


「えええ 何で笑うの!?」
「っふふ、いや! 思ったよりサマになってっから
 ビビって笑っただけ! 悪い意味じゃねーから! っぶふ」
「それ信じていいの?」


口元に手を当てながらくすくす笑う紅咲に

信じていい! ってーか信じて! 俺信用ない!?
って返したらそんなことないけどー、と返って来た。

何だ、不服そーだな。 俺、嘘はつかない男よ?

そこで先生到着と同時にチャイム。


「・・あ、紅咲 飴食い終わった?」
「あんだけ喋って飴がなくなる方が可笑しい」
「やっぱ? ごめんね?」
「んー、いいよ 当てられなければいい話だし」



―――――



結局紅咲はそのまま当てられずに2時間目が終わって。
後ついでに俺の朝練のぐったりも回復してた、やったね

無論部練で更にぐったりするわけですが

帰る際に下駄箱を除いたら、またも丁寧に乗せられた小さな小石


へー、秋サンRPG好きなんだ。 ちょっと意外かも?(笑)
そしてダンゼン冒険戦闘系RPGを推す!
オレはねー、音ゲーとかシューティングだね!
関係ねーけどクレーンゲームは自慢! 大得意!

  そう?(笑) 冒険戦闘系RPGいいよね、私も好き。
  けど話もキャラも気にしちゃう。 ううワガママ;;
  そうなんだ、リズムゲー得意そうだけどどうなんだろ?
  大得意とか羨ましい! クッション欲しいのに取れない;


読み終えて、誰も居ない下駄箱の前でくすっと笑って。
鞄の中にしまって、校舎の外に出た



大得意とか羨ましい!



(ぎゃーっ遅刻ー!)
(おーい! 今日は朝練ないのー!?)
(今日はないー! ってあれ! 紅咲!?
 ってかお前も急がないと遅刻すっぞ!)
(・・高尾君、もしかして時計見てない?)

(え? ・・・・あれ ヨユーで間に合うじゃん)
(だよね? ってか高尾君、あんなに全速力してたのに
 全然息切れしてないね。 流石運動部って感じ)
(40分フルで試合出るからねー それでも部練は死ぬけどねー)
(うわ・・・あ、学校すぐそこだけど一緒に行く?)





 

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