短編棚R
□突発ミニお茶会
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廊下をふらついていたメーゼが、ルッスーリアに呼び止められたのは、
珍しくまともな時間に昼ご飯を終えた日の3時間後だった。
「良い葉が手に入ったから誰かとお茶したいの〜♪」と
気分良く誘ってきた彼の誘いを無下にするのも気が引けたし、
特に用事もなかったからと了承した。
「メーゼちゃんって紅茶飲む人だったかしら?」
「あるなら飲むよ」
「あ、そう?」
「でも紅茶より、って言われたらカフェオレだし、
カフェオレよりもココアに行き着く」
「あぁ、そうよね・・メーゼちゃんと言えばココアよねぇ・・
アナタそういうとこは可愛いわよね・・・」
「今日はせっかくだからその良い葉とやらを楽しませてもらおうかな」
他愛ない会話をしながらキッチンに寄り、
ルッスーリアが手に入れたという葉の解説を聞きながら茶会の用意を。
少々余分なカップも準備して2人は談話室へと。
談話室に居たベルフェゴールも、その場の勢いで巻き込まれ。
かくして幹部3名による突発お茶会が始まった。
「へーぇ、メーゼ紅茶飲むんだ」
「あるなら飲むよ・・ってこの発言2回目だな」
「んふふ、さっき言ってたわねぇ」
「・・・ん、 あ、良い香り」
「あー、ほんとだな。 これめっちゃ良い」
「でしょ!? これボンゴレ本部寄った時に振る舞ってもらった物でね〜」
手慣れた動作に合わせて、紅茶の豆知識を口にするルッスーリア。
時折同ソファに座るベルとも近況報告をしながら、
談話室に「できたわよ〜♪」と野太いながらも高い声があがった。
ルッスーリアに近い場所に座っていたベルが、
紅茶を横流しでメーゼに渡した。
香りを一頻り堪能すると、
メーゼは目を伏せて小さく「いただきます」と呟いた。
彼女が入隊した時には「ジャッポーネ式だな」としばらく言われたが、
数年も経てば慣れるし、そこそこ親しい仲であれば移るもので。
ベルとルッスーリアも、倣うようにして「いただきます」と口にした。
「ん〜! やっぱり美味しいわぁ」
「・・・あー・・美味いなこれ」
「あっベルちゃんに好評ってことはマジでアタリなのね!!」
「オレをなんだと思ってんだオメー」
口々に感想を言い合うルッスーリアとベルフェゴール。
メーゼは一口飲んだ直後、少し考えるような表情を浮かべて静止している。
「あら? メーゼちゃんどうしたの?」
「・・・・」
「メーゼ?」
「・・・なんだろ・・、・・・?」
「え? 何?」
怪訝な表情で頭を悩ませるメーゼの様子を、
2人は首を傾げながら見つめていた。
しばらく悩みこんだ彼女は再度紅茶のカップを口にする。
「ど、どうしたの? 口に合わなかったかしら?」
「ん・・いや、美味しいんだけど・・・
なんか、 紅茶とは別のが混じってる、気がする?」
「え!? うそ!? やだぁもう異物混入かしらぁ?
アタシなんもしてないわよ・・・・?」
「疑ってるんじゃないよ。 初めて飲んだ物だからそう思っただけかも」
メーゼは眉を下げて小さく笑みを浮かべながら、
そのままカップに入っている紅茶を飲み干した。
「む、無理して飲まない方がよかったんじゃ・・?」
「やっぱ気の所為かも。 ほら、なんともないよ」
ご馳走様、と言って空っぽになったカップをソーサーの上に戻す。
ルッスーリアはキッチンから持ってきていたお菓子を取り出し、
「お口直しにこれ食べない?」と提案。
メーゼとベルは頷き、また他愛もない会話も始めるのであった。
*
「いやいやいや。 アイツは化物か?」
「効果0?」
「ビックリするぐらいゼロ。 なんか昔にさぁ、
元々毒とかが効きづらい体質とは言ってたよーな気がするけど」
「ここまでとは思わなかったね・・」
「スクアーロにはビックリするほど効いたのにな」
「『ゴトン』だったもんね」
「ほんとそれ。 レヴィとかも秒殺だったのに」
「うーん、紅茶と相性が悪い薬じゃないはずなんだけどな・・」
「こっちももう少し出方考えっかなー。 後はもうちょい試行錯誤頼んだぜ」
「いいけど費用と追加報酬は出してね。 研究もタダじゃないんだから」
「へいへい。 相変わらずがめつい守銭奴なこって」
「どうとでも言いなよ」