短編棚

突然訪問トリップ少女
1ページ/1ページ






正直、第一感想は「何故?」だった。

もう嬉しいとか、驚いたとか、そんなのより
「どうしてこうなった」の方が私の第一の気持ち。

因みに第二感想は「何で?」だった。

似てるようで違う、私の意思表示。
原因不明、謎のトリップ。


「お前・・・どっからやってきやがったァ!?」
「ちょっ 待! タンマタンマ! 待って、火神君!」
「何で別の制服着てるお前が、俺の名前を知ってんだよぉぉお!」


墓穴掘ったぁぁあ! どうしよう、どうしよう!

何でこうなってるかはわからないけど、
何が起きてるかは分かる! よし、現状確かめろ 私!


「とっ、とりあえず怪しい者じゃ、 いや、怪しいか!
 ちょっ、ちょっと待ってね!?」


現在私は体育館(だろうな、これは)の、段の上
目の前にはバスケのボール持った同い年くらいの高校生達!

けど! 見たことがあるんだよね!?
黒子のバスケで見たことがある人ばっかなのね!?

えぇぇ! 私トリップしてきた、っえ
見た感じそうじゃん!? 寧ろ何で!?

事故ったわけでも、屋上から落ちたわけでもないのに!

1人心の中でテンパる中、ぽん と肩に置かれた手


「落ち着いてください」


ギクリと肩が跳ねる。 壊れかけのロボットのように
首を回すと、淡い水色の、の、く、黒子君・・・!


「っわぁぁ!? っえ、ほ、本当に影薄いんだ・・!」
「言いたいこと沢山あるんで、まず深呼吸してくれませんか」
「よ、よし! すー、はー・・・すー、はッ げほっ」


必死に深呼吸。 吸いすぎて吐けない
やばい、どうしよう えっと、うん、よし 多少は落ち着いた!


「えっと・・よく分からないんだけど、そこの女の子
 ちょっとこっちまで降りてきてくれないかしら」
「は、はい!」


リコ監督だ・・! 本物だ!
ってか普通に綺麗ですよね、リコさん

やばい、テンパりすぎたせいか 謎の余裕。

段から飛び降りて、リコさんの前にまで歩く


「私達は誠凛高校、男子バスケ部よ。
 因みにカントクは私、2年の相田リコと言います」
「高校1年、紅咲桜と言います」
「桜ちゃん、 覚えたわ」


リコさんは私を見るなり、少し真剣な顔をして。


「私達が練習する中、貴女はいきなり体育館の段の上に
 落ちてきたの。 誠凛の服じゃないのに。」
「まぁ、面切って言うと・・お前何者? って話な」
「ですよねー・・・!」


日向先輩の右手が、握り拳作ってることにちょっと悪寒
ひえー、とは言われましてもどうしよう。


「あの・・・内容がアレなんで、最初に断りいれますけど。
 笑わずに、本気で、信じること前提 って条件なら・・・」
「・・・そんなにぶっ飛んだ話なの?」
「だから困ってんですよ。 本人の私も、
 何故こうなったかよく分かんないんです」


頬を小さくかく。 っていうかこんな漫画な展開アリですか


「んー、と・・・ま、一言で言うならトリップしたっぽいです」
「「「・・・・は?」」」
「だからー、別次元から来ましたー って言ってるんです」
「「「・・・・はぁぁぁ!?」」」


バスケ部全員の声がハモる。
それはリコさんも火神君も例外じゃなくて

唯一別の反応示したのは案の定黒子君だった
小さく「え」とだけ。 何と淡々とした反応・・でもないか


「じゃぁ、別の世界から来た? ってのに、
 何で俺の名前知ってんだよ!?」


それは正論。 時間軸にも寄るけど、
同じ世界ならまだ知ってる可能性もなくはない。

あ、体育館の入り口に2号が居るし IHは終わった後だな

って、質問されてたっけ。


「世界が違うからこそ分かる、っていうモノがあってですね」


そんだけの違いの話、なんですけど。


「住む『世界』が違う。 『だから』私は貴方達を知ってる。
 ぶっちゃけ、そんだけなんですけど。」
「・・・紅咲さんは元々僕らを知っていた。 けど何らかの事情で
 こちらの世界にやって来てしまった、ということでしょうか?」
「ありていに言えば、そんな感じ」


まとめてくれた黒子君に、小さく感謝した。

それに対し信じられない、という顔をしている
バスケ部員達に、小さく苦笑いもした。

・・・そりゃそうだわな。


「こんなこと聞くのはあれだけど
 私達のことどれくらい知ってるの?」
「名前と学年、んー 後皆さんのポジションと性格、
 キセキの世代くらいなら分かります」
「・・・結構知ってるわね」


小さく笑った。 結構読み込んだしね、黒バス。
っていうのは言わずに留めておいた。

たった1人、別の世界から来た私が
この世界の彼らを否定するのはしたくなかったから

こっちの世界の1人の人間が、
彼らを動かしてるとは思いたくなかったから

私は、彼らを傷つけないように過ごさなければいけない。


「ところで、あのー・・・」
「何? 桜ちゃん」
「・・・早速ですが、問題があるんです」


頬をかいた。 自分の持ち物を見て気がついた。

今着てる制服と、ポケットに入ってた
ケータイしか持ってないんだよね


「・・・急なトリップで、住む場所がないんです」
「あっ・・・」


思い出したように声を上げるリコさん。


「私の家ー・・・は、パパが何て言うかがまだ分からないわ」
「俺んとこも無理そう 部屋がねーわ」
「・・・あの、僕のとこなら空いてるんですけど」


小さく手を上げて、主張する黒子君
・・何と黒子君。


「ならよかった! 黒子君のお母さんには私からも話しておくわ
 桜ちゃんの服がないだろうし、後で家まで来てくれる?」
「わ、分かりました!」


後それからー、 と言って振り返るリコさん


「いつ帰れるか分からないのよね?」
「はい、サッパリ」
「なら入学届け出しておくわ! 制服も今週中に用意する。
 誠凛の生徒として、過ごした方がお互い都合もいいわ」


・・・確かに真昼間に、外を出歩くのは好きじゃないけど。
あ、でも誠凛か。 ・・・よし、


「これから・・これから、よろしくお願いします!」





(桜ちゃん、マネージャーもやってくれないかしら。
 多少の経験はあるんでしょ?)
(え゛、 ・・・数値見えました・・?)
(予測値だけどね。 ・・そんなことまで知ってるんだ?)
(結構何でも知ってますよ。 因みにミニバスやってました)

(おい、紅咲! ちょっと1回、1on1やれ!)
(なぁぁ!? 火神君は無理だよ! できないって!)
(・・・やめた方がいいと僕も思います)
(黒子止めるな!)





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ