短編棚

赤司くんの執事さん
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「おーい、赤司 早く帰ろーぜ」
「あぁ、すまない 今日は迎えが来る」


呼びかけられたチームメイトの声に、携帯から顔を上げる。
部活が終わって、携帯を見ると執事からメールを受信していた。

「”近くまで来たので、ついでに
 迎えに行こうと思いますが、どう致しましょう”」

『ついでに』と言ってしまう辺り、あいつらしいなと思う。

そしてこの執事のついでという言葉に甘え、
迎えを頼んだメールを送ったのがついさっき。

青峰は不思議そうな顔をしながら、俺の横にまで来た。


「迎え? 珍しーな。 親御さん?」
「違う。 俺の専属執事さん」
「男?」
「ご想像に」


隠す理由もないがクスリと笑って、部室を出る。
部室の鍵を閉めたところで、携帯がまたメールを受信した。

扉から鍵を放し、メールを確認する


「なんて?」
「コンビニ前に迎えに来るって。 俺らも寄っていこうか」
「おう。 暑いしアイス買ってこーぜ」
「あ、待て。 部室の鍵返してくるから」


おう、と短い返事を聞いて、俺は校舎に戻った。

たまたま出会った担任と少し話をしたら、
職員室にまで鍵返してくれるそうで。 ありがたい。

あまり時間掛からずに、青峰が待ってた校門に戻ってきた。


「早かったな?」
「すぐそこで担任と会ったからね」


行こうか、 と言ってから歩き出す。
数秒して青峰の口が開く


「で、部室の鍵は担任に押し付けてきたと。 っいててて!」
「お前は俺を何だと思っているんだ」


青峰の耳を引っ張る。

離せ! と必死に抗議したのを聞いてから手を離す。
あ、引っ張りすぎたか耳が赤い。


「いってぇ・・、! お前の何処からそんな力出てくんだよ」
「さぁ? 何処だろうね」


クスクス笑いながら、歩道橋の階段を上って行く

他愛無い話をしながら、下り階段に
差し掛かるとコンビニの前に見慣れた姿。

黄瀬と桃井・・・あ、黒子も居るな


「あっ、 赤司っちー! 青峰っちー!」


手をぶんぶん振る黄瀬に、うっせぇな と笑いながら、
階段駆け降りる青峰の後姿を見、自分も小さく右手を振り返した。


「珍しいコンビですね」
「今日は俺ら2人が一番最後だったからな なぁ、赤司」
「あぁ」


階段を下りきって、桃井が興奮気味に
黒子のゴリゴリ君が当たりだった、と言って。

それに黒子が持ってた当たり棒見せてくれて。
迷わず写真撮った。 俺も初めて見た。


「本当に当たり棒ってあるんだな」
「俺も初めて見たんスよ!」
「私、テツ君から貰ったのと2度目!」
「本当にたまたまなんですけどね」


苦笑いする黒子を見ながら俺も小さく笑った。
隣の車道で、ブレーキと車が止まる音。


「そこの赤い髪のおにーさん。 ドライブデートしません?」


振り返ると黒い車の窓に腕を掛けて
スーツ姿の女性がニッと笑って俺を見ていた。

その場にいたチームメイト4名は、
声を合わせて「はっ!!?」って。


「ちょっ、あの人どんだけ命知らずなんスか・・!」
「あ、ああ、赤司君に声掛けるなんて、どどどんな強者!?」
「桃井さん、落ち着いてください」
「おい、テツお前も変な汗出てるぞ・・ って、おい赤司!」


突然俺抜きで、小声でひそひそと話し出した
チームメイトを横目にその車に近づく。

青峰の制止の声聞こえたけどスルー


「桜、冗談はよしてくれ」
「あっはー、ごめんなさい坊ちゃん」


数秒後に彼女が言った、最後の単語を
またも4人が声を合わせて復唱した。

何だ、2度もハモるってお前ら仲いいな。


「あれ、後ろの方々は?」
「俺が言ってた部のチームメイト。
 それと後少しだけ待ってくれないか。 まだアイス買えてないんだ」
「りょーかい致しました。 近くに車止めてきます」


その言葉に頷くと桜は少し車を走らせ、
近くにある駐車場に向かっていた


「青峰、俺らも買いに行こうか」
「は? え、あ おう」


ポカンとしたままの3人を置いて、コンビニの中に入っていく。
そういえば家の者と、皆が会ったのは今回が初めてだったか。

アイス売り場に立って、何にしようか悩んでいると
青峰が控えめに何かを切り出そうとしていた。


「おい・・あれ、お前が言ってた専属執事?」
「そうだけど。 ・・あ、ご想像じゃなくなったか」
「それじゃねぇけど。 運転してたアイツ、一体いくつだよ?」
「彼女は今年で20。 免許持ってても可笑しくない歳だけど」


マジかよ、 とポツリと呟いた青峰に
俺は青峰が何を言いたいのかサッパリだった。





(・・・想像以上に若すぎましたね)
(わ、私、女執事って初めて見た・・・)
(後、めっちゃ美女だったっスね)
(予想以上に執事のノリが軽かったことに俺は驚いている)


(で、桜 どうだった? 彼らを見た感想)
(そうですねぇ、征君が楽しそうに彼らのこと、
 話す気持ちは分かったような気がします。)
(ふ、そうか。 ・・桜、その征君と呼ぶのは、)
(えー? 屋敷の中堅苦しいし、外でくらい許してくださいよー)





 

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