短編棚

休日でも電車でそれから
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「”もしもし、俺だけど。 桜ちゃん?”」
「あ、もしもし。 えと、どうかしたんですか?」
「”うん。 あのさ、”」


ちょっと俺とデートしない?
・・・・・はい?

ケータイ越し、先輩の突然のデート発言に私は、思わず自室で赤面してしまった。


「え、は デート・・・ですか」
「”あ、桜ちゃん 今絶対顔赤いでしょ”」
「はっ、 ちょ、なん いや、赤くないです」


頑張って否定の言葉を述べれば っぷ、と吹き出した声と
っあはははと笑ういつもの高尾先輩。

盛大に笑われた、最高に解せない


「”っふふ、っはー 桜ちゃんおもしれーの。 でさでさ、今から空いてる?”」
「あ、空いてます」
「”よかった! じゃ迎え行くから準備しててー! また後でな!”」


はい、と返すとぷつんと電話特有の雑音が途切れ、つーつーと通話が切れた音。

ケータイを閉じ、少し何を用意しようかと悩んで
そういえば目的地自体を聞いてないことを思い出した。

・・適当に一通り準備したら大丈夫かな



―――――



「海遊館?」
「そっ! 先日できたとこ。 妹ちゃんがそこのチケットを
 貰ったらしいんだけど、興味ないからって貰っちゃった」


そう笑いながら、海遊館のチケットを2枚ひらつかせた
隣に立つ高尾先輩は、普段の学ランとは違い私服だ。

かくいう私も私服ですけれども。

席が空いているにも関わらず、いつもの定位置に
立ってしまうのはもう癖か。 癖なのか。


「お互い私服で電車乗んの初めてだよな」
「ですね。 いつも学校の行き帰りだから」
「ホントは制服デートとかしたかったんだけどなー」
「よ、寄りかからないでください」


部活忙しいんだもんー とか言いながら
ぐぐぐ、と私に体重掛けて傾いてくる高尾先輩

この人私の話聞いてな・・・ちょ、重い 重いです先輩

そのまま傾いてきて、自分の頭が壁にこつんと当たった時
私の前を腕が通り過ぎて、ドアのところでトッと手がついた

・・・え、何これ。

・・流行りの壁ドン・・?
リアル体験なうですか・・?


「桜ちゃん隙ありすぎて、センパイ心配だなー?」
「・・・あの・・・・近いんですけど、」


先輩の顔を見られなくて、顔をドアの方向に逸らした。

直後視界の端で先輩の顔が急接近して、
耳に何かが触れて、熱くなる頬を感じながら無言で耳を抑えた。


「桜ちゃん、ホントからかいがいあるね」
「・・・からかわないでくださいよ、」
「・・でも本気。」


絶対オトすって決めちゃった。

少し見上げた先には高尾先輩の意地悪そうな笑顔。
中学の時にも何度か見たことあるだろうか、


「先輩の、その表情は・・ちょっと苦手です、」
「中学ん時も同じこと言われたかなー」
「・・よく覚えてますね、そんなこと」
「そりゃー好きな子に苦笑いで言われちゃーね」


耳元の近くで話す先輩は果たして確信犯なのか。

「ん」と一言、私の肩に頭を乗せる先輩に肩を竦めた。
真横から抱きしめられて、壁側の肩に触れる手


「桜ちゃん相変わらずほっそいね」
「・・この間同じことを言われました」
「だろーね。 言ったもん」


私の肩の上に置いてた顔を上げて、真横から本格的に
私を強く抱きしめた高尾先輩は、首を傾げて私の顔を見つめた。

意地悪な表情しといてーのこのあざとさは一体どこから、


「ね、海遊館楽しみ?」
「です。 小さい頃に行ったきりだから」
「隣に男のコ居るけど?」
「・・・恥ずかしいので抱きしめるのはやめてほしいです、」


少し顔を逸らしたら、何ということでしょう

肩に触れてた高尾先輩の手が頬に当てられて、
顔を背けた意味がなくなってしまった。

見透かすように、見つめられたその眼は
何だか目が離せなくなって。

・・・あ、これはまずい


「先輩、」
「ん」
「・・負けました、勘弁してください・・」
「っ、ちょ桜ちゃん えっ、何どうしたの!?」


先輩の胸板に額当てて、先輩の服掴んで顔隠したら
凄く困惑してる高尾先輩の声が降ってきて。

あ、やばい 勝った。 とも思った。





(ってか桜ちゃん、さっきの負けましたって何)
(え、 言葉通り)
(待って、俺の何に負けたの? ねぇ)
(あ、因みにその直後 同時に勝ったとも思いました)

(俺に何で勝ったの! 可愛さ!?
 桜ちゃんの方が可愛いに決まってんでしょ)
(・・・真顔でそーゆーこと言うのは反則です、)
(・・桜ちゃん 今さ、俺 勝ったって思ったわ)
(でしょう、ね。 ・・・どうも敵わないな・・、)





 

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