短編棚風

□お前は迷っているらしい
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改めてラウンジで課題と向き合うこと数十分、
無事に片付けてその後ランク戦で数十分を潰す。

更に立ち話やら開発組との相談会話で数十分が潰れた。
一息付いたなと息を吐き出せば不意にメッセージの通知音が耳に届く。

スマホを開くと風間から「どこに居る?」と簡潔なメッセージ。

用件だけのメッセージを数言だけ交わして合流するなり本部の外に出た。


「本部で何かしていたか?」
「課題してランク戦して雑談して相談してた」
「忙しないな」


この半年で随分と歩き馴染んだ連絡通路を渡りながら、
短い会話をいくつか展開していく。

連絡通路から一番近いファミレスに足を運び、
それぞれ注文を済ませると風間は1つ息を吐き出した。


「話ってなんだ」
「ん? あ、そうそう。 部隊の勧誘されたんだよね」


呼び出した理由を忘れていたらしく返答に一拍空いたものの、
用件と思しき話題が挙がり、風間が思わず顔を上げる。


「・・・・今日初めて?」
「今日初めて」
「あいつらの目は節穴だな」
「え?」

「声掛かるのが遅すぎるぞ」
「風間さんはスカウトされた?」
「これまでに4件来てる」
「多いな、流石風間さん」


ランク戦の連絡が来た頃に概ね感想は言い合った。

お互い、部隊を立ち上げようとは今はまだ思っていないこと。
スカウトがあれば相性次第で受けるかもしれないこと。

それに加えて静香は、全く見知らぬ人と組むのは怖いかもと零したことも。

半分独り言で半分相談と報告である用件の理由はこれだったか。
風間は納得したように店員が注いできたコップの水を喉に流し込む。


「スカウトしてきたのはどんな奴だった?」
「1個上のシューターだって」
「中距離なら別に良いんじゃないか」
「私もそう思う。 人は良さそうだった」

「他のメンバーは?」
「スカウト中だってさ」

「・・・大1の射手って誰だ?」
「火谷って名乗ってたな」
「火谷?」
「あ、下の名前忘れた」


特に表情を変えないまま顎に手を添え悩む仕草を見せる静香。

彼がなんと名乗っていたか思い出せない。
あ、そういや連絡先交換した時フルネームで登録してたっけ?

連絡先が入ってるスマホを鞄から取り出そうとする静香の対面に座る風間は、
少し瞬きを繰り返した後、口元を緩めて小さく笑みを零した。


「成程な」
「んん?」
「火谷大和さんだろう」
「あっ多分それだ」


スマホのロックを解除している最中、
アンサーと思しき火谷のフルネームが風間の口から出て来る。

登録した連絡先を探しながら、静香は一瞬スマホから顔を上げた。


「・・・知ってる人?」
「山吹と落ち合う直前その人から勧誘された」
「・・んんー!?」


予想外の発言に静香は笑いながらめいっぱい首を傾ける。

じゃぁ上手く行けば攻撃手2人という話は、私と風間さんのことか。

静香と風間が友人であることを火谷が知っているのかは定かでないが、
同じ隊から別々にスカウトを受けていたこの状況は少々考え直しても面白い。

注文していたカレーとオムライスが店員の手により運ばれてきて、
それぞれのテーブルの前に料理が出される。

注文は以上かと確認する店員に了承と礼の言葉を述べ、
2人はそれぞれスプーンを手に取った。


「返事は保留にしたが、山吹と組めるなら悪くないかもな」
「ありがと」

「あの人雰囲気が3割くらい嵐山だな」
「思った」
「1割迅」
「あ〜」


納得する共通する友人の名が挙がり、言われて納得する雰囲気。
それぞれ料理に口を付け黙々と食べ始める。


「4人目呼ばないなら近中距離の部隊になるな」
「火力寄りになりそう。 いや、火谷さんは支援になるのかな」
「火谷さんの戦い方によって変わりそうだな。 知ってるか?」
「分かんない」

「・・・もう1度本部寄るか」
「二度手間すぎない? 明日にしよう」



■お前は迷っているらしい



(・・・あー、 凄い、ちゃんと考えて動いている人だ)
(単純に上手いな)
(風間さん抜きにしてもこの人と組むのアリかもしんない)
(・・・・スカウトしてきた他の隊員のログも探してくる)

(はい、いってらっしゃい)
(ただお前が火谷さんのところに入るなら、多分追っかけると思う)
(ん、)
(そう思う程度には良いチームになりそうだ)





 
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