OP 短編―U―
□となり
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摩訶不思議な状況だ。
今、私の視界に映る世界は青空ではなく木目。
空の青さがまだ焼きついているというのに、そんな空が木目とは。
私の記憶に間違いがなければ、この木目の空(天井)はダイニングのはずだ。
――…まさか!
私はついに瞬間移動などという特殊能力を習得したのか!
なんて便利な能力だ!
早速使ってみようと私は精神を集中させ念じる。
が、視界に一ミリたりとも変化はない。
「むっ…。これだけじゃ駄目なのか……」
念じるだけでは瞬間移動は出来ないらしい。
「ああ、名前か」
私としたことが、なんて恥ずかしい。
必殺技には総じて名前が付いていることを完全に失念していた。
「秘儀、テレポート!甲板へゴー!」
掛け声はまだ決まっていないので適当に叫んではみたが、我ながらネーミングセンスはゼロだ。
それだけではあまりにも寂しいので、サービスとして拳を突き上げてみた。
早いうちにかっこいい名前を付けなければ。
「医務室へゴーだ。このドアホウ!」
空から怒鳴り声と同時に、固い拳が額に落下してきた。
鈍い音がした、頭蓋骨骨折を疑いたくなるような、低く鈍い音だった。
額への衝撃よりも後頭部が何故か、非常に、異常に、痛い。
「なんなの?!この痛み!!あ、ありえない!!」
あまりの痛みに(これ以外に表現が見つからないというか間違いなく正確に)私は飛び上がった。
そんな私の目の前にいたのはゾロだった。
どうやら、私に向かって拳を落下させた犯人はゾロのようだ。
その証拠にゾロは拳を握り締めていたし、何より――
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