OP 短編―U―
□となり
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走っても、走っても。
その背中に追いつけない。
それが悔しくて、悔しくて。
追いつこうと必死になった。
「遅ェ!」
「ごめん」
ゾロが持っているのは私が握ったものと同じ、ただの木刀だというのに。
それがまるで真剣のように見えてしまうのは、ゾロの厳しさで――…
私に対する、優しさ。
だと、思っている。
ちょっと自信ないけど。
「行くぞ、今度は集中力を切らすな」
「はい!」
私は、この男に惚れている。
告白はしない、というか出来ないでいる。
ゾロには大きな野望があって、親友との約束もある。
背負っているものの大きさに、今の私ではきっと、負けてしまう。
そして、泣くんだ。
自分の弱さを恨んで。
「目を逸らすんじゃねェ!」
「はい!」
泣きたくない、負けたくない、そう思った。
身体も、心も、全部まとめて強くなろう、そう決めた。
野望のとなりに立っても笑っていられるように、押し潰されたりしないように、強くなろうと。
なんのとりえも無くて、ごくごく普通の私だけど、この気持ちだけは。
これだけは、絶対に、何があっても譲れない。
私は、もっと、もっと、強くなる。
いつか、ゾロのとなりに立ちたいから。
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