OP 短編―U―
□となり
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紫煙を燻らせて眺めた先には気に入らねェ緑の野郎と、そんな緑に惚れてしまった可哀想な君。
最初、君はただ泣いていた。
この船に乗るには少しばかり覚悟ってやつが足りない女の子だった。
自分の弱さ、世界の厳しさ、海の恐ろしさを知って泣いていた。
それをようやく克服出来てきた頃、心にも余裕が出てきたんだろうな、君はまた泣いていた。
今度は、ゾロを好きになってしまった、って理由で。
俺にはよく分からなかったんだ。
好きになったことは泣くことなのだろうか。
嬉しかったり、楽しかったりするもんじゃねェのか、って。
理由を聞いて、『ああ、この子はクソ優しい子なんだ』って改めて思った。
「私の修行の相手をしてください」
なんて改まってお願いされた日、君の瞳に初めて『覚悟』ってやつが見えた。
それから、本当に少しずつだけど、君はちゃんと強くなっていった。
けど、君は不器用な子だから。
隠しているつもりでも、君の気持ちはもうみんな知ってるぜ。
あのマリモだって例外じゃねェんだ。
「俺がアイツの修行の相手をする」
ゾロのとなりで笑えるくれェ強くなりたいなら、確かに一番の近道。
「泣かすなよ。一応、俺の最初の弟子だからな」
「絶対に泣かさねェよ」
なんて誓った日は、目玉が飛び出るかと思ったっけ。
あのマリモが、君のことを想ってるなんて知らなかったからさ。
「クソ強くなったなぁ。こりゃ勿体ねェことしたかな、俺」
茜色に染まる空を見上げ、苦笑いを浮かべた。
きっと、君がゾロのとなりに自信を持って立てる日は、すぐそこ。
END