OP 短編―U―
□the wan moon
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きっともう満月の夜に眠れなくなることはないだろう。
当分来なくていいなんて返されてしまったことに苦笑いが洩れた。
彼女はきっと分かってる。
夢が現実になるまでは、何があったって俺はそっちに行ってやれないんだってことを。
夢が叶って、とことん満足しなきゃ俺はそっちに行かないんだって。
いつかの話になるけど。
彼女にまた会えたら。
彼女をめいいっぱい抱きしめて、じゃれ合って。
数え切れない程のキスをしてあげよう。
何百回でも何千回でも言ってあげる。
最後まで彼女に言えなかった言葉を。
「好きだ」って。
「愛してる」って。
彼女のマグカップを優しく丁寧に洗う。
まるで新品のようにピカピカに磨き上げ、食器棚の隅に戻した。
彼女と別れたのは満月の夜。
眠れなかった月の夜に別れを告げて。
the wan moon
[2009/06/27]