短編

□お題小説
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お題 手紙・ナイフ・箱

 色んな人が、箱の中に座る僕を見下ろす。ある人は悲しそうに、ある人は愛しそうに見下ろし、足早に通り過ぎていく。
 今の僕の世界は、この狭い箱の中だけだ。空を見上げると、ナイフで切り取られたような、四角い灰色が見えた。
 どんよりとした雨雲は僕と同じように、今にも泣き出しそうだ。
「僕はどうなるんだろう」
 不安に押し潰されそう…僕は目茶苦茶に泣いた。
「ねえ!どこに行ったの?どうして僕はここにいるの!?」
 泣き疲れて、声が擦れても僕は泣き続けた。そうしていないと、不安で仕方がなかった……
「どうしたの、君?」
 僕を見下ろす優しい瞳、そっと僕を抱き上げた。
「君、私の家に来る?」
 その人は僕がいた箱の中にあった手紙をくしゃっと握り締める。
「捨てるなら、最初から飼わなきゃいいのよ、こんな手紙残したって意味無いのに……じゃ、行こっか!」
「にゃー」
 その日。僕は捨てられて…拾われた。
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