長編小説 〜Prominenceシリーズ〜完結
□Out of Nowhere-Prologue
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「ルア、キルア。
朝だぞ、起きろ。」
微睡みの淵に愛しい声が聞こえる。
俺は無意識にその本人を引き寄せ、寝床へ引きずり込もうとした。
「朝っぱらから何をするのだ、変態!」
悪態をついて、スルリと温もりが去って行った。
俺はその温もりを逃がさんと逃げた方へ薄く目を開いた。
そして、弾かれた様に飛び起きた。
「!!クラピカッ!?」
見慣れた金髪と大きな瞳、純白の肌の持ち主は、少し顔を赤らめて腕を腰に当て怒っていた様だったが、俺の驚愕ぶりに気負されて、自分を指差して言葉を失っている俺を不思議そうに見つめた。
「?ああ、髪のことか?
今朝、カルトに切って貰ったのだ。」
あぁ、これは…、
『いつもの』クラピカだ…。
「…驚かしてごめん。
おはよう、クラピカ。
…今日はいつもに増して綺麗だ。」
俺はクラピカの細い腰を抱き寄せて、おでこにキスをした。
「全く。
今日は大事な日だから朝早く起きなければと言ったのは、キルアなのだよ?」
煩い口唇を塞いでしまおうかとも思ったが、昔は喜んでいたのに最近とみに恥ずかしがって嫌がるから額で止めた。
「シャワー浴びてすぐ用意するよ。
リビングで待ってて。」
「朝食ができているから食べるのだよ。」
「わかった。
ありがとう。」
クラピカは柔らかに微笑むと、ドアから出ていった。
熱いシャワーを頭から浴びて、まだドキドキする鼓動を静める。
驚いた。
髪を切った所為だ。
本当に「あの」クラピカが居るみたいだった。
俺は、込み上げる想いを熱いシャワーで洗い流した。