長編小説 〜Prominenceシリーズ〜完結

□Embraceable You
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「兄貴!!」

イルミにキルアが噛みついた。
全員の視線がクロロに集まった。

「話をしよう…。」

クロロは真っ直ぐクラピカを見つめて言った。

「?!」

「二人で話がしたい。」

「二人でって、てめ…」

イルミが身を乗り出したキルアを片手で止めた。

「だから大丈夫だよ、キル。
彼は何にもしやしないって。」

「何言ってんだよ兄貴!
アイツは敵討ちに来たかも知れないじゃないか!

…!!」

しまった、そんな話は兄貴は知らない…。

「…キル。
実は僕は彼等と長い付き合いでね。
だから彼等と君らがどんな関係か知ってる。
だから、そんな状況も全部分かってて今回の訪問を受け入れた。
大丈夫。彼は何もしないよ。
もし何か不穏な動きをしたら、
…その場で死ぬ事になる。
彼もヒソカもそれを知ってる。
だよね、クロロ。」

キルアはクロロを睨みつけた。
相変わらず、彼はクラピカだけを見ている。

「分かっている。
俺はお前達に危害を加えたくてここに来た訳ではない。
それに敵討ちしたいのはそっちだろう。
逆に、チャンスだ。だろ?」

そう言って、クロロは笑顔をクラピカに向けた。

「だからって…」

キルアは相変わらずのクロロの威圧感に歯ぎしりした。

「外にいるよ。」

クロロは黒いコートを翻してドアから出ていった。

「行くことないよ。クラピカ…。」

クラピカはクロロが出ていったドアを睨み付けていた。

「協力してくれよ
彼は何もしないよ。
手を出そうとしたら直ぐに分かる仕掛けになってるし、逆にボクが喜んで彼の相手をするからさぁ。」

クラピカは暫く黙っていたが、ポーチの外套掛けから上着を取った。

「クラピカ!」

駆け寄るキルアにクラピカは言った。

「行って来る。」

穏やかな表情だった。

「だったら俺も…」

「彼等が言う通り、奴は手出しはしないだろう。」

泣きそうな顔をしているキルアにクラピカは優しく微笑んだ。

「大丈夫。直ぐに戻る。」
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