長編小説 〜Prominenceシリーズ〜完結

□Embraceable You
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外は今にも雪が降り出しそうに雲が垂れ込めていた。
クロロは森の入り口近くにある大きな木の近くに立って森を見ていた。

「一体何の用だ。」

クロロが振り返って満面の笑みを浮かべた。

「良かった。来てくれたね。」

コテージに入って来た時からこの男に違和感を感じていた。
髪を下ろしているからだ。
オールバックの時より随分印象が違う。
額の逆十字も無い…。

「何?あぁ、ここ?
旅団に戻る気が無くなっちゃったから取ったんだ。
それに、この髪型の方が若く見えるでしょ?
逆十字あると邪魔だから、取っちゃった。
もし必要になったら、ヒソカのドッキリテキスチャーで付けて貰おうと思って。」

クロロは額を指差しながら楽しそうに答えた。

「そんな事はどうでもいい。
一体私に何の用だ。」

クラピカは相変わらず射るような目つきでクロロを睨み付けている。

「…会いたくて。
君に会いたくて、ここまで来た。
随分探したんだよ。
クラピカ…。」

この眼だ。
俺だけを追い掛け続けた美しい琥珀。
その奥に、ピジョン・ブランなんて霞む位に美しい、狂わんばかりの緋い憎しみの炎が燃えている事を俺は知ってる。
あぁ、俺はやはり君を求めていたんだ…。
全然違う、本物の君は想像していたより遙かに凛々しく美しかった。

「何の為に?
やはり…仲間の復讐か?」

クロロは首を振って言った。

「復讐したいのは君の方でしょ?
…俺の事まだ恨んでるだよね…。」

何でこの男はこんな憂う表情をするのだ。
調子が狂う…。

「では、何の用なのだ。」

言葉に苛立ちが滲む。
クロロはクラピカを真っ直ぐに見つめて言った。

「君に一目会いたくて来たんだよ、本当に。
会えて嬉しかった。それで、思い付いた。
クラピカ、俺と一緒にここを出よう!」

「は?!」

「こんな所で隠れて暮らす事なんか無い。
少し覇気が無くなってない?
さっきから気になってたんだ、刺激が足りないんじゃないかな。
大丈夫。何度も言うけど俺は君に復讐何て全く考えて無いし、例え君に手出ししたくても旅団は君が俺と一緒なら手を出さない。
だから、二人で色んな所に行こうよ。」
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