小説〜Another Editions〜
□Christmas Promise
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「ネェ、X'masって知ってる?」
本から目を上げると、猫の様に目を細めて満面の笑みを浮かべたキルアが居た。
「あぁ、世界三大宗教の一つキリスト教のキリストの生誕祝だろう?
最もイスラム教もユダヤ教もオリジナルは…」
「ぢゃなくて…!
X'masの過ごし方!」
「といわれても、私はキリスト教徒ではないからなぁ…。
クルタにはクルタの宗教みたいなものがあって…」
「んな事いったら、オレなんて、無宗教だっつーの!」
「…。つまり何なのだ?キルア。」
「…もー、いい!」
キルアはスタスタ寝室へ向かってしまった。
「全く…。」
勿論、X'masに世の人々がどんな過ごし方をしているのか位、いくら私でも知っていた。
それでなくても、キルアが見る番組もCMも最近はX'masばかりをクローズアップしていたから、否が応でも知ってしまう。
元々創られたイベント事は余り好まないので、知らないフリをしていたが…。
何だかとても楽しみにしている様だったから、少し悪い気がした。
あ〜ぁ、結局X'masはククルーマウンテンで過ごす事になりそうだから、ちょっとは気分を変えてイベントっぽいのもアリかな〜って思ってたんだけど、クラピカってホントそういうトコお堅いって言うか融通が利かないって言うか…。
オレ、単純に二人でケーキ喰ってプレゼント交換してってやりたかったんだけどな…。
そうこうするうちに、今日はX'mas Eve。
「アレ?これって…。」
「ロテサリーターキー。
何だ?お前が楽しみにしてそうだったから焼いてみたんだが?
最も味に保証はないがな。」
「覚えてたんだ!あん時の話。」
「覚えてるも何も、メディアにX'mas関係が出る度にあんなに羨ましそうな顔してたら誰だって気付くだろう?」
ターキー旨い…。
色々言うけど結局このヒト、オレの事考えてくれてるんだよなぁって、ターキー頬張りながら嬉しく思った。
デザートにはチョコレートケーキまで用意されていた。
「手作りじゃなくてすまないな。
飾りだけは私がやったんだが。」
ダークブラウンのチョコレートケーキの上にフロストシュガーが粉雪の様にかかっていて、その上に赤い実を付けたヒイラギとブルーベリーが添えてある。
ちょっと苦くてブランデーが効いてて、大人の味だった。
「すっげー大満足!」
キルアは食後のコーヒーを飲みながら満足げにお腹をさすった。
「また雪が降ってきた…。
寒みーけど、外出てみる?」
昨日から雪が降っていて辺りは一面の銀世界だった。
お陰でランプの光だけでも十分明るい。
コテージの近くの大きなモミの木が、随分雪に埋もれていた。
キルアはおもむろにポケットに手を入れると銀に光る星のオーナメントを取り出して枝に付けた。
「来年またここに来て積雪量を計ろうな。」
「…ん…。そうしよう…。
あ…キルア。」
クラピカはキルアと向かい合うと小さな包みを手渡した。
「プレゼントだ。」
「!!
開けてもいい?」
「勿論だ。」
それは銀に輝くネックレスだった。
ヘッドはコラージュされた羽ばたく鳥で瞳に緋い石が埋め込まれている。
「その鳥はクルタでは永遠の命を司る神。」
「…永遠の命…」
「石は私のピアスと同じクルタで採れる希少石だ。
チェーンもヘッドもシルバーではなくプラチナにした。
…気に…入らないか…?」
キルアは慌ててブンブン頭を振った。
「ううん!
ゴメン、ちょっとビックリして…、すっげー嬉しい、
…ありがとう、クラピカ!」
キルアはクラピカの口唇に優しく口付けた。
良かった、喜んで貰えて…。
鳥も緋の石もプラチナも全て永遠の私。
何時までも、お前と共に居るよ。
Merry X'mas キルア。