その他武受けnovels

□タイミングだけは良くて
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※十年後



ああほんと、

君はヒーローみたいだ



『タイミングだけは良くて』




銃声が鼓膜を引き裂いて轟く


走り込むように路地裏に駆け込む
胸元に差し込んでいたパラベラム弾のストックを口に挟むと
片手で弾切れしたのを落として器用に弾の補充をする


「少し、甘くみてましたかね…」


口元からはらしくなく荒い呼吸が漏れ、冷たいコンクリートの道には
深紅の血が小さな水たまりを作っていた


(利き手じゃないだけましですか…)


試しに左腕を動かそうとするが指先の感覚がない
彼女が万全の状況だったらここまで追い込まれなかったのに

いや、そもそもあんなつまらないミスをしてしまった自分のせいだ
悶々と自問自答していると男の声があがる、見つかってしまったようだ


ここにいても袋の鼠なだけと判断し即座に路地から出れば銃弾の嵐
それを細身を利用して避けるが多勢に無勢片手にベレッタだけでは限界があった


逃げ場という逃げ場に黒ずくめが現れいつの間にか追いつめられていた
あまりの数の多さに呆れが出てくる


「はぁ…たった男一人にこれだけとは大人げないというか、汚いですねぇこれだからマフィアは嫌いです」


彼女がまだ万全の体調でない限り極力自分のことで力を使いたくないのだが


「これで死んだら呪いますよ沢田綱吉」


呪詛をはくように利害の一致で今身を置いているファミリーのボスの名を出す
仕方ない、と三叉槍を出そうとした瞬間


自分の周りを水柱が走った


「…っ」


撥ねる水飛沫が顔を濡らす
水柱の向こう側では人の倒れる音と鋭い金属音が響く
漸く、水柱が無くなったと思ったら想像通りの人物がそこに立っていた


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