SD小説集

□月
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※学パロタクスガ



*始まりの月曜日*




人が良すぎる

それが自分こと、ツナシ・タクトの性格であり性分である
困ってる人を見るとつい手を貸してしまう、それこそ呼吸をするように当然に、平然と
そんな生まれつきのお人好しが身に染みた我が身を恨めしく思う日が来るとは思っていなかった


現在


「イッツぁーハングリぃー」


呻き声に同調するように腹の虫も鳴る
何か買って来て食べれば済むことなのだが伊達に貧乏学生ではない
ほんの少し残っていた食費も昨日ひったくりに遭い文字通り一文無しだ


(今死ぬとしたら餓死だなー)


食べ物の匂いが充満している昼休みの教室から命からがら来た屋上で
青空を眺めながらそんな事を考えていた

屋上は風が強いので意外と人は来ない
ここに人が来る理由は一人になりたいかもう一つくらいである
後者は滅多にないので一人っきりの屋上を僕は堪能していた


そんな幸せを閉ざす音一つ


(珍しいな、こんなとこに人なんて…)


ドアの開く音と共に2つの影
幸か不幸かドアの上に登っていた僕はこっそりその二人を確認することができた
一人は首まで真っ赤でもじもじと何か言いたそうに口をぱくぱくさせている
一方向かい合わせに立っている人は早く終わらせろとばかりの無愛想ぶりだった


(あ、なるほどね)


ここに来る人の理由は大きく分けて2つである、一人になりたいか、
もしくは、告白だった

どうやら目下で行われようとしているのは告白らしい
しかも正直結果は目に見えている


「悪いけど、興味ないから」


開始五分。
目一杯の勇気を振り絞って言った告白は何の抑揚もない一言であっさりとフィナーレを迎えた
告白した子はその場が気まずくなったのか走って屋上を去っていき、僕は焦って身を隠す


「盗み聞きとは悪趣味だな」
「…っ」


ばっと前を向くと梯子を登ってきた相手と目がかちあった


「悪かったよ、でも僕のが先客だった」
「それにしてはずっと見てたけどな」


ばれてたのか
でも珍しいものをうっかり見てしまうのは人間の性ってものじゃないか
だけど物珍しさで見ていた自分に非があるので素直に謝ろうとした瞬間先に彼が口を開く



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