SD小説集

□火
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*初体験な火曜日*





「お付き合い」を始めたからと言って僕の生活に何か変化が現れたわけじゃなかった
いつものように学校に行って授業を受けて昼休みにスガタ(って言えっていわれた)は現れたけど


「悪いけど今日はちょっと用事があるから、これで我慢してくれ」


となんとまぁ高価そうな二段のお重箱を渡され風のようにいなくなってしまった
因みにあの時の教室内の静けさと周りからの視線は忘れられない


「いっつぁーごーじゃす…」


お重の中は見た目にひけ劣らず三十品目のおかずと七種の米で握られたおにぎりが所狭しと入っていた
約2日ぶりのご飯に目尻が潤うのを感じながら全て咀嚼させて貰いましたご馳走様



「…全部食べたのか」


放課後になって補助鞄に教材を入れてる最中に現れたスガタにお重を返した瞬間言われた一言だった


「あ、ごめんスガタの分も含まれてた?」
「いや、構わないけど。よく全部食べれたな、あの量を」
「すごくおいしかった!あんなに美味しいならいくらでも入るよ!」
「そうか…」
「どうかした?」
「いや、それよりタクト。今日一緒に帰らないか?」


どうやら放課後デートのお誘いらしい
特に僕も用事はないので2つ返事でオーケーした


「さて、と、スガタの家ってどっち?」
「その前に寄りたいところがあるんだ」


付いてきてくれ、というスガタの申し立てに頷きスタスタと歩いていってしまうスガタに置いて行かれないよう必死に
彼のやや斜め後ろを付いていく

後ろから見ると綺麗な姿勢で彼が歩いているのが分かる、やっぱり武術を嗜んでいるせいだろうか自然と自分も背骨に力を入れていた
するとスガタの背中がぴたりと止まり、僕も立ち止まって彼の視線の先を見ると女の子が一人こちらに向かって来る


「スガタくんっ!」
「ごめん、少し遅れたな」
「ううん、いつも通りだよ」


水を差すようで悪いと思いしばらく二人の会話を眺めていると
スガタはあぁ、と思い出したように(酷い)僕を見て女の子に話しかけた


「彼がツナシ・タクト」
「よろしくタクト君!私アゲマキ・ワコ、よろしくね!」
「よろしく、えっと…」
「あっ、スガタ君とは小さい頃からの友達なの」
「へぇ、改めましてツナシ・タクトです。ワコちゃん?」
「もぉ!ワコでいいよ、タクト君の事は実は前から知ってたんだ」
「こんな可愛い女の子に知っててもらえるなんて光栄だなー」
「そんな事言って、鼻の下伸びてるぞタクト」
「あははっ、やっぱり面白いタクト君!スガタ君の言うとおりだね!」


ねっと明るい笑顔をスガタに向けるワコと言われた彼の姿はとても親密そうで、あぁ仲良いんだなと一目で分かる
その後詳しく聞くところによると、僕らが通う南十字学園の姉妹校である女子校に通う彼女の送り迎えを家が近いよしみで毎日しているらしい



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