SD小説集
□日
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(追いかける…か)
その気持ちは確かにあった
今日の朝に思い直して彼の家に行こうとした時に彼が置いていった手紙を読むまでは
(お金持ちの一人息子だもんなぁ、許嫁もいるよなー…)
コーヒーミルを回しながらため息が漏れる
「そんな絶望した顔で煎れた珈琲が果たして美味しいのだろうかっ!」
「うわっはい!!ごめんなさい!って、ワコ?」
振り向くとすぐ後ろにあるカウンターに肘をついて身を乗り出している女の子一人と目があった
「いつから、」
いたのと言う前にワコは後ろの二階の席を指さす
金曜日にスガタと一緒に座った場所だ
スガタの特等席
「実はさっきから居たんだけどタクト君忙しそうだったから声かけづらくって」
「そうなんだ、えっと何か食べてく?」
「ううん。タクト君今、時間ある?」
「もうすぐ休憩時間だけど、スガタの話?」
ワコが自分に話があるとすればスガタの話以外にないだろう
念を押すように聞くと小さくワコは頷いた
「ここでする話じゃないし、店の裏行こ。店長に聞いてくるよ」
すぐに厨房にいる店長に承諾を得て店の裏に移動する
**
「で、話っていうのは…」
「タクト君、スガタ君の今の状況知ってる?」
少し遅れて僕は頷く
「許嫁がいるんだよね、生まれた時からの。家のしきたりだって」
だから僕とはここまでだって
手紙に書いてあったその内容を読んで追いかけるのを止めたんだ
「あのね、それ私のことなの」
「…」
その予想はしてた