SD小説集

□日
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生まれた時からの許嫁ならば相当仲が良いだろう、それに当てはまるのは自分の知ってる限りワコしかいない


「でもスガタ君も私も婚約破棄しようと思ってたの」

「え」


目の前のワコはそう言うと、顔を逸らして思い出すかのように店を見上げた


「ここね、本当は一回だけスガタ君に連れて来て貰ったことがあるんだ、どうしてだと思う?」

「どうして?」

「タクト君に会いにだよ」


さっぱりちんぷんかんぷんになってる僕の顔を見てワコは笑う


「スガタ君がね、一週間前くらいからかな?一緒に帰る時に通ってるお店に面白いやつがいるんだってすっごく嬉しそうな顔で話すの」

「それって」

「うん。タクト君のこと」


スガタ君がそんな風に人のこと話すなんて初めてで、見てみたいって言ったらこのお店のあの席に座らせてくれて


あいつは珈琲が苦手らしい、煎れる時にいっつも不機嫌そうになるんだ

この前の日曜は大人っぽい女の子に声かけられて思いっきり緊張してた

服とかの高価品のプレゼントは貰わない質らしいな、それだけは断ってるから

でも甘いものは好きなんだ、作るのも好きみたいで楽しそうにいつも作ってる

僕は甘いもの食べれないから食べたことないけど

結構評判らしい、何か頼んでみるか?



「ってずーっとタクト君のこと話してて、その時は多分本人は無自覚なんだろうけど」



「スガタ君がタクト君のことすっごく好きなんだろうなーってすぐ分かったよ」




「だ、ったら、」


なんで、あんなあっさり離れていったんだ


「それでね月曜の夜にスガタ君から電話が来たの」


自分が恋愛感情でタクト君が好きだったこと、それで期間限定のバイトを申し込んだこと


「ほとんど勢いだったんだって、男の子から告白されて何か踏ん切りがついた所にタクト君がいたから」

「勢いって…」


じゃぁあの偉そうに上から目線だったのは緊張してたから?

素直じゃないにもほどがあるだろスガタ

思わず緩んだ口元から笑みが漏れる




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