ヒバ山novels

□桜咲くのち
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※未来で山本がプロ野球への道を選んだらのIF話





待ってる

ずっと答えを待ってる




『君だけが恋しくて』



まだ薄暗い夜明けに目を覚ますと
寝惚けぎみな頭が肌寒い空気にゆっくりと解凍されていく

素早くトレーニングウェアに着替えると外に出た

規則的なリズムで馴染んだ町を駆け抜ける
そしていつもと同じ、今はもう卒業した見慣れた校舎前で止まった

(もうすぐ春か…)

特に何の感情も持たず桜並木を見つめながら目を細めて




「君は来ないの」

強制するものでも催促するものでもなくただ答えを待っている目で俺を見据える

「ん…一応、夢あるかんな」
「そう」

苦笑まじりに答えると素っ気なく返される
明日には見ることが出来ない顔

「雲雀、俺さ」

好きだったよお前のこと―。びっくりしたような雲雀の顔が珍しくて面白くて
でも恥ずかしくなって逃げた

それから
何も交わさずに雲雀はここを発った






あれから6回目の春
良い機会に恵まれてプロになった自分
夢を叶えてもどこか心の隅っこが寒かった


(あいつ今何してんだろー…)


いつも不機嫌そうに眉を顰めてだけどいつも自分たちを自分のやり方で守ってくれて
頼もしくてかっこよくてそう思うだけで心が満たされた

元気だと、いいな

ふとポケットが小刻みに振動する
音の発信源を見てみれば今のチームの1人からだった

「あ、やっべ集合時間早まったんだった!」

早急に踵を返して家へ直行した





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