SD小説集
□木
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鍛えている癖に細い腰を引き寄せる
清純な香りが心地良い風にのって鼻孔をくすぐる
頬はほんのり紅潮していて、いつもは冷えている掌はじっとりと湿っている
震えるように閉じられた瞼に長い睫が影を映し、呼吸が触れあう程に距離が縮まって
「ツナシタクトっっ!」
「はいぃっ!!」
呼ばれた自分の名前に大きく机の音をたてて盛大に反応する
そんな四時間目の授業中
*もんもん木曜日*
「珍しいな、お前が居眠りするなんて」
「なんで知ってんの…」
「結構噂になってるぞ?20回は名前呼んだのに起きなかったって」
「あんまり深くつっこまないで…」
「相当良い夢見てたんだな、何の夢だったんだ?」
少し首を傾げ覗き込むような仕草をするスガタの顔をじとりを見ると
夢の中のスガタが脳裏をよぎって後ろめたい気持ちになった
耐えきれずにぷいっと顔を逸らし「起きたら忘れたよ」とごまかす
「へぇ、まぁよくあるよなそういうこと」
「うん」
スガタは納得したように再び手元のお弁当に手を付ける
僕も残りのお弁当を口に含みながら一つの疑問を抱いていた
(スガタはキスとかしたいのかな…)
月曜にこの場所で『お付き合い』宣言をされたが
正直お付き合いらしいことは放課後デート(ワコ含む)とこのお弁当くらいしかない
まだ2日しか経ってないが、一週間という契約の中ではこのレベルはお付き合いというかお友達のような気がする
(て、あれ僕がスガタとキスしたがってる?)
はっとそのことに気がつくと一気に血の気が引いた
授業中の夢も自分の欲望を示唆してるのではないか
(うそっ僕って実はホモだった!?)
「タクト?」
「いやっ違う!違う!」
「…何が?」
「へっ?いや、あのえーっと実は放課後剣道部の練習試合の補欠頼まれてて…」
何か恐ろしいことに気づきかけの自分の気持ちを悟られまいと、ここに来る前に剣道部の部長に呼び出された話題を出す
「いけばいいさ、もう返事はしてあるんだろ?」
「いや、まだしてないよ。スガタにも聞こうと思って」
「いいよ。僕も今日はちょっと寄るところがあったし」
「ごめん」
眉を寄せて焦るように謝るとそんな姿に呆れたように
「お前は困ってる人を見捨てられない質だからな、」
とただ静かに微笑んで、頑張れよと言ってくれた
なぜだかそんな子どもを慰めるような仕草が寂しいと思った僕はやっぱり変だ
***