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□騒然たる静寂の中で
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 鈍色の空に、ひとつ、黒点が消えていく。鳥だろうか。少し興味が湧く。
 ━━いや、そんなことは今、重要なことではない。早く行かなければ!
 颶風は人気の無い獣道を駆けていく。時折、何処か痛むのか、顔をしかめ歯を食い縛りながら走り続けている。
「ッ・・・!?」
 揺らいだ視界に、思わず立ち止まってしまう。吐く息の酷い白さに、数時間前に眼前を覆い尽くした赤を見た気がした。
「くそっ・・・」
 故国を染め上げる赤錆は、確実にその手を伸ばしている。現に、鉄臭いこの身は、大半を赤が染めていた。
 この赤は自らのものか、あるいは━━・・・
 それを考えてしまい、悪寒が身体を走り抜ける。こんなものが故国を覆い尽くすのかと思うと、吐き気すらする。
 行かなければならない! 止まってなどいられない!
 颶風を掻き分け、男は走る。鉛を詰めた袋を背負っているような感覚に、息が詰まりそうになる。
 ぐらつく視野に活を入れ、蛇行する足を叱咤する頭に、残してきた家族の顔が過る。
「・・・・・・っ」
 戦火はすぐそこまで迫っている。早く行って知らせなければ・・・
(巻き込まれる・・・!)
 この先にある街は要塞都市と呼ばれるほど堅牢な街。だが、突然の襲撃を受ければ甚大な被害を免れない。
 別機動隊とは言え、それなりの戦力があった。しかも奇襲が得意ときた。どんな事態があっても、向こうの指揮官に伝える必要がある。
 行かなければ!
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