Sanctuary

□Sanctuary「雪と厄介者」
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「・・・私達、そんなこと言われる覚えは無いと思うけど? あったかしら?」
風雪舞う街の一角に、大きな高い声が響いた。女のものだ。白い吐息を吐きながら怒鳴り散らしてている、コートを着た女が裏路地に居た。
その女の傍に居た長躯の男が、
「無いと思いますよ、私の記憶では」
と言った。その二人は、数人の男達に囲まれている。
「そう? じゃあさっさと終わらせて帰りましょ」
刹那、地面の雪が吹き飛んだ。女の傍にいたはずの男が、正面にいた男を蹴り飛ばしていた。
女が動こうとしたが、男が制止する。
「アザラキ様がわざわざ手を出すまでもありません。私にお任せを」
そう言うとすぐに、男は別の男の懐に入りこみ、拳を振るう。
「ぐあっ!」
踵を返し、男の肘打ちが隣に居た男の鳩尾に、まるで吸い込まれるかのように入る。
「・・・無茶は止めときなさいよ、いいわね? 後、死なない程度に」
アザラキと呼ばれた女が、男にそう言った。
男は一瞬動きを止め、
「重々、承知の上です」
と言い、肘打ちを入れた男の顔面を思いきり蹴飛ばした。
「クソがっ!」
別の男が懐から銃を抜いた瞬間、男が急速に間合いを詰めた。
「主を侮蔑するな」
鈍い衝突音が響き渡った。
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