しょうせつ
□ゼリービーンズ
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昼休みが終わって授業が始まるまでの五分間、
ミズキから回ってきた交換ノートを読みながら大好きなゼリービーンズをつまんでいた(ほんとは学校にお菓子をもってきちゃいけないけど)
今日の楽しかった出来事や嫌な出来事、
色とりどりのペンで書かれている。
美緒ー、きいてよー。
数学の小テストC、やった?
うちのクラス今日やったんだけどさ、ぼろぼろだったー。
まじで0点かもよ。ほんとわかんないんだって。
こんどおしえてねーっ
次は美緒。
明るさのにじみでたミズキ字。
その次の真っ白なページを開こうとした、瞬間だった。
「ねえ、ゼリービーンズってうまい?」
あたしの机の前にしゃがみこんだ中村明宏は、
透明な袋にいれられた派手な原色をしたそれらを指差して言った。
「・・・おいしい、よ」
疑問符のついた声色で返す。
みんな座ってるじゃん
ほら、早くもどんなよ
先生がすぐに来るよ、怒られるよ
ともいいたかったけれど、そうは言えなかった。
中村明宏は袋を机の上に戻して、
「こういうカラフルなん好きなの? 人の味覚ってわかんねー」
花が咲いたみたいな笑顔で立ちあがり、自分の席へと戻っていった。
一番後ろに座るあたしの列の、一番前の席。
あたしは「こういうカラフルなん」の赤をひとつぶ口に入れる。硬い表面を砕けば、柔らかいものがでてくる。人工的に甘い、いちごの味。
ミズキー。
いまね、あたしがゼリービーンズ食べながらこれ読んでたらさ、中村明宏がね、それうまい?って訊いたの。
うんって答えたら、人の味覚ってわかんねーっていってわらってた。
初めて話したけど、なんか謎くない?
じゃあね。
ついしん:あたしでよければ数学教えるよー★
次はミズキ