ゆめ
□彼女
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彼女、がいるのは知っていた
ふたりのことは既に公認というか
学年でも有名な話である。
どちらかを見かければ大抵、となりにどちらかがいる
あたしだって知っている
というかあたしが、ふたりをくっつけた。
「そういえば未生って好きな人いんの?」
そう訊かれたときだって、となりには彼女が微笑んでいた
そうだ未生ちゃんの話聞いたことないなあ
なんて、性格のよさが明らかにわかる口調で相槌を打っていた
あたしは、答えることができなかった
ふたりを繋いだのは他でもなくあたしで、
当然あのひとは自分の恋路を応援してくれたあたしが、
自分のことを好きだった、なんて知っているはずがない。
あたし、あなたのことが好きだったの
とられたくなかったのに
なんて悲劇のヒロインを演じるつもりはまるでない
「いない、よ。好きな人、いな、い」
片言になりつつも紡いだ言葉を自らの口から発したとき、
負けた気がした
彼女、からもあのひと、からも
あたしは、目の前のあのひとが好きだけれど
目の前のあのひとが好きなのは
そのとなりの彼女。
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