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□01:ありがと
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「ありがとう、隼人」
懐かしい記憶。
既に自分の記憶から抜け落ちたその存在は、夢の中でのみ姿を現す。
ただその姿が、美しく、優しく、儚げであったことだけは覚えている。

ベッド
長い髪
冷たい指先
そして、言葉。

「ありがとう」

それだけが、自分をこの世に送り出した女性が残した全て。



目覚めは決まって不快だった。夢でいくら聞けども、その言葉を自分に囁く者は既に存在しないものを。

不毛な、感傷。

頭痛





気を取り直して支度をする。自分には、大切な役目があるのだ。
獄寺は、わずかに残る記憶と感傷。それを不要なものとカテゴライズし、奥底へと押し込めた。
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