贈り物
□雨夜が繋ぎし、我が奇縁【1】
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――――ピチャン
水音に
彼は意識を浮上させた。
しかし、まるで靄がかかっているかのように彼の意識はぼんやりとしたもので。
その一方、何かを考えるのが億劫になるほどの高揚感に浸っている気にもなって
いた。
ふわり、ふわり
まるで雲の上を歩んでいるかのようだ。
彼は思った。
そして、幼いときに母から読んでもらった本の中の天使を思い出していた。
ピチャン
また水音が狭い部屋の中に響く。
音に耳を傾けていた彼は、その水音よりも大きな音が響き渡っているのを聞いた
。
少し早いリズム
それでいて一定のそれを何かと思い出すのにもぼやけた頭では苦労する
ドクン、
ドクン、
ドクン
音と同時に自分のこめかみが脈打つのにようやく彼は答えにたどり着いた。
心音。
己の心音だ。
とたんに手首が熱い
そしてすぐその熱は痛みに変わる。
「っ……」
気づいてしまえば腕はさらに痛みを誇張しだした。
うめき声すら上げそうなそれを和らげたくて身を動かそうとすれば…
カシャンッ!
高い音が鳴った。
金属音が。
そのくせ腕はピクリとも動かなかった。
彼はそこで気づいた。自身の腕が何故か頭上に持ち上げられていることに。
何故か?
何故かだと?
誰かが笑う。
聞きなれたそれ。
心内でもう一人の自分が自嘲の笑みを浮かべている幻想を見た
彼はゆっくりと
それまで故意に閉じていた瞼を
ゆっくり、開いた。