贈り物

□雨夜が繋ぎし、我が奇縁【2】
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くんと鼻をひくつかせば、雨の匂いがする。

直に降り出すことを彼は予測した。


そっと点を見上げる。

やはりそこには

暗き雨雲のみ。


ジリリン…ジリリン

彼が凭れる電話ボックスの中が音を立てた。

しかし、

そのとおりを歩く人々はもうすぐ来る雨のために早足で誰もその音に気づいてもいない。


彼はゆっくり左右を確認して自分が注目されていないことを確かめると、凭れていた背を離し


ボックスの扉を開けて中に入った。


ジリリン…ジリリン…ジリ、


ガチャリ


「Hello」

彼は受話器をとって端的に挨拶だけを済ました。

そして、口を閉じる。


相手の言葉を待った。


『……』

「……」

『…探しものは見つからなかった』


慎重な相手が盗聴を警戒して数十秒

返ってきた言葉。


受話器を持つ彼は「分かった」と告げる。


「ならやはり持っているんだね。」

『そうだろう』

「第二でいく?」

『…あぁ。』


少し間が空いた

その相手に


彼は笑った。


「大丈夫だよ、僕たちは守られている。大丈夫」

『……』


相手は何も言わない。それが相手なりの同意なのだと知っている彼は気にせず語り続けた。


「じゃ、第二でいくんだね。たぶん接触はすぐになると思うけど」

『すでにそっちには人をやっている。』

「OK」


それで会話は終わった。回線の切れる音を聞くより早く…彼は受話器をおく。


その瞬間、ポツポツという軽い音が耳に響いた。

ボックスのガラス越しから見れば


ついに、雲は雫をこぼし始めたようだった。



ボックスから出て、彼はまた天をむく。

冷たいそれが頬にはねる。


一回の瞬き


それで彼の心は固まった。
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