黒き冤罪・白き追憶
□【プロローグ】〜月白〜
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暗い。
何処までも深い闇の中を、一人の少女が…宛ても無くさ迷っていた。
辺りには霧が立ち込め、只でさえも静寂な夜の暗黒が広がるのに、更に視界を悪くしている。
少女は豪奢な白いドレスを身に纏っていたが、その殆んどが真っ赤な血で染められ、布の所々が何かで引き裂かれ…引き裂かれた布の隙間から見える傷口からは血を滴らせていた。
━誰か…!?━
誰でもいいから、この悪夢の様な状況から助けて欲しかった。
━神様、どうか…━
━私が罪を犯したのなら、私の命なんて要らないから…━
傷付いた体を引きずる様にして、少女はただひたすらに“何か”を求め、あるいは逃がれようと歩き続けた。
(私が…私がいけないから…きっとあんな事になったのよ…)
傷が痛むのか、それとも心が痛むのか…。
視界は涙で濡れ、胸がズキズキと痛む。
必死に歩いているうちに何時しか街外れの丘に建つ教会まで辿り着いた少女は、血にまみれた手で重たい扉を開け、そっと中に入った。