HUNTER×HUNTER

□マゾヒスト
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「ちっちゃ。」

ぼそっと呟いたと同時に膝から崩れ落ちた。

「なんか言たか。

今お前の方が小さいね。」

蹴られた膝がじんじんしている。
それよりも痛いのがフェイタンの視線だった。
ぞくっとするような目で私を見下ろし、その手は私の頭に置かれていた。
力の加減も知らないのか、掴まれた頭も痛い。

「次調子に乗ったこと言たら、殺すよ。」

「ふん。やれるものならやってみな。」

ドスの利いた声で脅されたって、ひるむことなんかしない。
負けじと押さえつけられた腕の下からフェイタンを睨む。

「ふっ。口の減らないガキね。」

パンッと乾いた音がした。
ワンテンポ遅れて頬がじんじんと痛み出した。
すでに腫れてきていることさえわかる。
切れた唇も痛い。

「ワタシに喧嘩売るってことは死を覚悟することね。」

容赦なく胸倉を掴まれ、顔を引き寄せられる。
強制的に目を合わせられ、その細い目に射(イ)殺される錯覚に陥った。
脅しでないその言葉に背中がぞくぞくと波打った。

「フェイ。そこまでにしとけ。」

フィンクスのその言葉にフェイタンは手を放す。

どすんと重力に逆らわず、尻もちをついた。

ドッドッと波打つ心臓の音が痛い。

二人が部屋を出て、気配が消えると、ようやく息が吸えた。
しかし鼓動の音は早いままだ。


たった今自分の死をリアルに感じた恐怖。

それによって満たされたそれ以上の快感。


唇の端から垂れる血を舐めた。




「・・・ほんとフェイタンって最高。」









2013/03/12   kai


ただの変態の話。

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