HUNTER×HUNTER

□多忙な彼
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ガチャガチャ

バタン


無遠慮に開くカギとドア。
無音の中に突然響いた音に、驚いて目が覚めた。
しかしあれだけ派手に音を立てたのに、足音は全く聞こえない。

しばらく耳を澄ませているが、部屋に入ってくる気配はない。
不思議に思って身体を起こして廊下の方を見ると、バスルームに入って行く人影が見えた。

少し経つと、シャワーの音が聞こえてきた。

はあ

思わず出る溜息とともに、布団をかぶり直す。
忘れたころに現れるあいつは、こちらの都合も考えずに真夜中にやってくる。

男を連れ込んでる日じゃなくてよかった。

なんて無駄な心配だけど。
あいつは、フェイタンは、私に男がいようがいまいが気にやしない。
例えば今日ここに男がいたってシャワーを勝手に浴び始めただろう。

考えれば考えるほど腹が立ってきた。

あいつは私の何。
私はあいつの何。

布団をよけて、ベッドから降りると足音を立てて部屋を出る。
脱衣場の引き戸を勢いよく開けた。

「何ね。覗きか。」

バスルームを出たフェイタンと鉢合わせになった。
久しぶりに見るフェイタンの顔にさっきまでの怒りはどこかに消えた。
飄々とした顔で言ってのけるフェイタンに、出端を挫かれたようだ。

「・・・久しぶり。」

思わず口から出たのはまぬけな言葉で。
それも目線はとりあえずフェイタンの下半身だし。

「・・・どこに言てるか。」

戸棚からバスタオルを取りながらフェイタンが呆れたように言った。

さらに目線を落とすと、フェイタンの血だらけの服が目に入った。
黒い服が嫌な色に染まっている。
それを見ると胸が苦しくなった。

「おかえり。」

タオルを腰に巻き終えたフェイタンに抱きつく。
フェイタンが無事でよかった。

自分より少し低いフェイタン相手だと、抱きつくというよりは抱きしめる形になってしまうのが少しまぬけかもしれない。

「急になにか。」

力を込めた腕を引きはがされたと思うと、軽々と身体が持ち上げられた。
フェイタンの肩に背負われたまま部屋へと移動すると、ベッドへと放り投げられた。

「・・・もうちょっと丁寧にしてよー。」

やっぱり私はフェイタンの何。
もっと大事に扱って欲しい。

そう思っても、自分の上で嬉しそうににやりとしている顔を見るだけで、自分の感情なんかどうでもよくなってしまった。








「もしフェイタンが来たときに私が男といたらどうする?」

横で寝転がるフェイタンににやにやしながら聞いてみる。

「どうもしないね。」

やっぱりね。思った通り。

「そう。でも連れ込んだのが昨日でよかったー。こんな危険な男が出入りしてると思われたら、せっかくのセフレが逃げちゃうから。」

フェイタンの反応なんか気にしてませんとでも言うように軽く言ってみせる。

ちらっとフェイタンの方を見ると、身体をこちらに向けてにやにやしていた。

「何よ。」

「昨日も入れた女が、あれだけ痛がるわけないね。」

「ッ!!」

にやつく男の顔に枕を投げつけると、布団を頭まで被って目を閉じた。




あんたがめったに来ないんだからしょうがない。









2013/04/02 kai

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