短編夢小説

□夜警について行こう
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酉の刻に入ってすっかり辺りが暗くなった頃。
昌浩と物の怪は、完全に暗くなるのを待って、いつものように夜警に行くため安倍邸を抜け出した。

よいしょ、と声を上げながら、昌浩が築地塀の上によじ登る。

続いて身軽な動作で地面に着地した昌浩は、自分の側に降り立ったいつもと違う神気に首を傾げた。

「あれ、勾陣?今日は六合じゃないんだ」

呼ばれた勾陣は、音もなく昌浩の隣に顕現した。

「たまには昌浩との夜警も面白そうだと思ってな。六合に頼んで代わってもらったんだ」

「そうなんだ」

別に勾陣が着いてくることを咎める理由もないので、昌浩は夜警を続けるために歩き出した。
と、いつもなら昌浩の足元をうろついてるか肩に乗っている物の怪の姿がいないことに気付く。

肩越しに振り返った昌浩は、勾陣の肩に乗っている物の怪の姿を認めた。

そういえば。
いつからだか正確な時はわからないが、物の怪と勾陣が非常に仲が良い気がする。

昌浩が最初にそれに気付いたのは、天狐凌壽の手にによって勾陣が重傷を負わされた時だった。

瀕死のため本能を剥き出しにして暴走する勾陣を止めたのは、なんでも封印を解き放った紅蓮らしい。
その時に、何かあったのだろうか。

勾陣が一命を取り留めて異界で休養している間も、物の怪はずっと彼女の身を案じていた。
それこそ、大袈裟すぎるんではないかと昌浩が思うほどに。

しばらく歩きながらも無言で思案していた昌浩は、不意に立ち止まって思っていたことを口にしてみた。

「もっくんと勾陣ってさ、最近仲が良いよね」



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