「ねえ、朱雀」

名前を呼ばれて朱雀は不機嫌な顔をした。
名前を呼んだ本人をギロリと見下ろす。肩に背負った木刀を振り下ろして相手の眼前に突き付けた。

「まだやるのか、杏里」

心底嫌そうな声音が言外にもう俺は嫌だぞと語っている。
しかし杏里は突き付けられた木刀の先端を掴んでそれを押し返した。朱雀の不機嫌さが更に増す。

「しつこいぞ。何度やったって結果は変わらない」

「そうかなぁ。あともうちょいだと思うんだけど」

「……そんなわけないだろう」

首を捻る杏里に朱雀は一瞬言葉に詰まった。
実際のところかなりの早さでの上達を見せる彼女は本当にあと少しで朱雀に追いつくほどまでに成長していた。気を抜けば一瞬でやられてしまう。
内心冷汗を流しながら、そしてまだ十と少ししか生きていない少女に朱雀は得体の知れない焦燥感を感じた。
違う土壌でなら彼女が自分を上回っても何ら可笑しくないのだ。例えば彼女らが生業としている陰陽師。この能力だけは朱雀や十二神将がどんなに頑張っても敵わない。しかしだ。
体術や剣術は違った。逆にそれは人間がどんなに頑張っても十二神将に、増してや闘将には敵わないだろう。それは越えられない人とそうでないものの差なはずだ。それなのに。

「杏里、お前は化け物か?」

「…なにが」

その声音は固かった。一瞬だけ杏里の顔が傷ついたそれになる。
朱雀がしまっと思ったときにはもう遅く彼女はいつもの少し生意気な笑みを浮かべていた。

「化け物ねえ、上等だよ。それくらいならないと目標には届かないだろ?」

なんたって目指すはあのじい様なんだから。
何でもない風に笑う彼女に朱雀は頭を抱えた。
本当に、なんて失言をしてしまったのだろう。彼女は人と違いすぎる自分を気にしているのだ。決して面にそれを見せようとはしないが。それは誰もが知っていることでそれに触れないことが暗黙の了解になっていたというのに。
わしゃわしゃと自身の髪を掻き混ぜながら朱雀は言った。

「杏里、すまん。今の発言を訂正する」

一呼吸置いてから朱雀は杏里の頭に手を伸ばす。
彼女の頭を撫でながら彼は膝を折って彼女に視線を合わせた。

「女に化け物発言は失礼だったな。うん、お前は立派な女の子だ」

杏里は無言で頭上にある手を振り払い朱雀の膝を蹴飛ばした。
何をするんだと抗議してくる朱雀に杏里は木刀を突き付ける。

「もう一回勝負だ」

そして女の子扱いするんじやねぇと木刀を振りかざした。



レスは日記にて!



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