欲を駆り立
てられたのだ
と、自分は思
う。あの三日
月型の美しい
紺に鈍く光る
ブルーが反射
する髪に何度
触れたいと手
を疼かせたこ
とだろうか。
手を絡めて絡
めて、あの糸
束を指で絡め
とり一本一本
に通った神経
を舐め上げ蛋
白質を吸い取
り色素を瞳に
反映させるの
だ。    
 分かってい
た、自分が愚
かだと言うこ
とを。あの禍
々しく光る土
星の反射させ
る鈍い光は髪
の光沢と言っ
たところか、
それが瞳の奥
でぎらぎらと
輝いていた。

 きっと復興
なのである。
否恐らく、し
かしかの偉人
の様に。復興
なのである。
 あの強く禍
々しい眼球が
この私を射止
めた瞬間!全
身の血が駆け
巡り駆け巡り
握り締め爪が
食い込んでし
まった後から
ぽたぽたと垂
れ、終点に辿
り着く。それ
は山から駆け
てきた川の流
れが海へと広
がるような。
それは終わり
を目指し、終
わりが無いこ
とにも気付か
ず終わりを目
指し、目指し
、     

「その目は私
の何を写す?
」     

 男性の中で
はきっと高い
のだ、この音
は。何故なら
先程聞いたヴ
ィオラの音と
それは似てい
たから。あの
男の喉仏はヴ
ィオラの全て
を鳴らし尽く
したのである
。オーケスト
ラの中で弾か
れた弦はきっ
と痛むその身
を跳ねさせて
鳴くように歌
うのだ。だか
らあんなに高
い音が出る、
そう結論付け
た、してそれ
がどうしたか
。あの低く響
いたベースと
ベーシスとの
指の関節の話
じゃあ無い。
頭の中にはチ
ェロを殺す馬
の毛が絡まっ
ている。  

 その喉仏に
触れたい、引
っ掻き回して
自分だけの物
にしたい。そ
う考えてしま
うなんて、き
っと楽器に触
れていないか
ら餓えている
だけ。否、実
際はそうなの
か。この行き
場を無くした
血が行き溜ま
る床の上で何
をしようと。
欲するならそ
の眼球と喉仏
を。    

「嗚呼、サタ
ーン」   
「マーズ、」
「もう駄目だ
わ、駄目なの
、この復興が
治まらないの
。私はどうに
かなってしま
ったの」  
「…それを人
は欲求と呼ぶ
」     

「…ああ、」
(欲なんだわ
きっと、だっ
て手が求めて
いるの)  

「サターン、
貴方の復興に
、添いたいと
思っているみ
たい」   
「それはと言
うと?」  

「欲情」  
「…この私に
欲情したか…
」     

「お仕置きだ
」     

 欲するなら
その眼球と喉
仏を。   



(080907.サタ
マー/土星を囓
った女)  


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