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□【取扱説明書】
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「……………ねぇー……なんか話そうよー。」


「だから眠いんだってば。」


「そんな事言わないでさぁー!」


「あっちで大人しくしてなって。」

























―取扱説明書―

H.Nagano×Y.Inohara





















バスの中で過ごす、ロケの空き時間。


暇を持て余して隣へと近付けば、あからさまな"面倒ですオーラ"を放つ長野君が

















「頼むから今日は寝かせてよ。」

















目を閉じたまま言葉を繋げてく。


















「えー!長野君寝ちゃったら、話相手いなくてつまんないんだけど。」


「じゃあ、よっちゃんも寝てれば?」


「……眠くない。」


「なら外行ってスタッフさんとでも話してきなよ。じゃ、おやすみ。」


「おやすみって…………あーぁ、冷てぇなぁー長野君。」


「……………………………。」


「昔はもっと優しかったのになぁー。」


「……………………………。」


「あー暇だなぁー……暇だぁー、スゲェ暇だぁー。」


「……………………………。」




















わざとらしく騒いでみても、まるで"井ノ原はほっといても大丈夫"と言わんばかりのスルー具合。


さすが、俺の扱い方がよく解っていらっしゃる……。

















でも!俺だって、だてにこの人と長年付き合ってるわけじゃーないぜ!














この十数年で作り上げた、"長野博 取扱説明書"の1ページ。

"長野博を起こす方法"

それは……
























「そういえば、この間俺ん家の近くに新しいラーメン屋ができてさぁ!」


「……………ラーメン屋?」


















はい、ビンゴー。














倒していたリクライニングを瞬時に戻して、満面笑顔で俺に詰め寄るグルメ王。



















「噂によると、スッゲー美味いらしいんだよねぇ。たしか魚介系のスープで」


「いいねぇ!魚介系スープは香りとコクをいい具合に出すのが大変だからなぁー!まずダシが……」





















―30分後。

















「こう塩をブレンドしたりするとまた違……って、よっちゃん聞いてる?」


「……………へっ?……へ?あ、うん。」


「寝ちゃダメだから!それで、この間食べた塩ラーメンがさぁ!」





















まるで子守唄にも聞こえる、途切れないグルメトーク。










逆に眠気と戦うはめになった俺はその時、長野博・取扱説明書を修正しようと心に決めました。














長野博を起こす方法=
















"起こさず寝よう"。








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