主に思春期、青年期の情緒発達の状態にある若者達に、ささいな失意体験に誘発されて、自分の体の一部、主に手首を鋭利な刃物切る自傷行為を繰り返す人がいます。そうした行為障害を手首自(リストカット)傷症候群とよびます。この症候群は疾病論的な診断ではその本質が理解されず、むしろ自己愛的で未熟な性格者の抑欝、引きこもり、あるいは演劇的、攻撃的な傾向との連携で起こる性格障害として理解すると良いです。自傷はどうして起きるのか?結論から言うと、手首自傷の本質は、対象喪失、失意体験、それがもたらす抑欝、不安、緊張、怒り等を解消しようとする試みであり、自分の体を毀損する自己破壊行為でそれを達成する事にあります。
@「ヒステリー」機制
いわゆる"あてつけ"にリスカを行うもので、従来はヒステリー患者の演技的行為の一つと考えられています。つまり、対象の注目や関心を引いたり、相手に罪悪感を起こさせる事に寄って、対象を取り戻そうとする機制で、それは同時に対象を自分の思うように支配しようとする手段の一つでもあります。
A「手首の人格化」の機制
自分に失意を与えた対象を攻撃し罰する為に、自分の手首を対象と同等視して傷つける機制です。例えば、失意を与えた母親に見立てて傷付けるのです。また、手首は悪い自分と見立て罰する為に手首を切る例や、悪い部分が血液に流れていると考えて手首を切ってその悪い血を流す事で自己懲罰する例も、本質的にはこの機制によります。
B「自我機能の回復」の機制
これは、自傷し痛みを感じる事で離人状態から自己の現実感覚を取り戻す統合の試みです。自傷によって身体と自我の境界を区別する事で自分を感じ、我に返るという自我機能の修復が中心機制です。手首自傷だけでなく、火のついたタバコを皮膚に押し付けて故意に火傷し、それで我に返るのもこの機制です。中には、自傷によって痛みや死の恐怖を克服したという感覚、死をコントロールしているという感覚に満たされ、初めて自己評価が高まるという例も見られます。C「否認・逃避」の機制
自己の内面的、心理的な藤を否認し逃避する為に、自傷する事で自の藤に直面する事から目をそらそうとする機制です。例えば、自分が見捨てられたという過去の辛い体験から、似たような体験をした時に手首を切る事でその辛い考えを切り捨てるのです。
こうした四つの機制は、単独あるいは混合して現れます。

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