解離性同一性障害
(二重人格及び多重人格)

心の中の無意識や潜在意識が一つの人格となって現れる特徴として、普段の自分に戻った時には別の人格の言動を一切記憶していない。人格それぞれが独立している事を言います。

多重人格は神経症の一つに分類されています。
個人の思考や記憶、感情、アイデンティティが統一性を失い、それぞれが独立して活動する状態となる事を指します。

二重人格や多重人格になる原因として幼児期に性的、身体的、精神的な虐待を受けた可能性があると考えられています。

但し、交代人格同士の交代はありえます。
参考:24のビリー.ミリガン(早川書房)

治療は正確な診断の下に行う精神療法が主流となります。

第一段階−状態の安定と軽減化
治療には正確な診断が下されている事が前提となりますが、意外と困難です。
多重人格等の診断が疑わしく思われ、確定する次の段階までは、まず不安を取り除く事を中心とした治療から始め、症状の軽減が目標とならざるをえません。

第二段階−診断の確定と患者への告知
診断の確定だけでなく、これを患者に伝える事は乖離障害の治療にとって最も重要です。
更にこの診断を患者が、受け入れる必要があり、患者の状態により告知の時期は異なります。

第三段階−人格の数やその役割等の確定
多重人格の場合人格の数が異なります。治療目標は、外傷となっている記憶と乖離した人格の統合ですが、その前に交代人格達の数とその役割、特徴等を明らかにする必要があります。
どのような理由から交代人格が誕生し、出現するのか、人格群の中でそれはどのような役割を果たし、どのような位置を占めているのか、治療者は正しく把握している必要があります。
この為には患者に日記を書いて貰い、日々の記録を取っておく事が役立ちます。また他の人格出現時期の確定には、患者のその間の記憶の欠損が手掛かりとなります。

第四段階−心的外傷の記憶の探索、同化と統合
この心的外傷の記憶は外傷イメージや悪夢、フラッシュバック等として表れます。
これらの外傷性記憶を同化、統合するという事は、患者を外傷イメージに直接向けさせ、患者の生活史の中に入れる事になります。
深い心の傷とどの様にして向かい合わせるのかが、この段階の治療ポイントとなり、様々な技法が開発されています。
ここで催眠療法が重要になり、主人格は外傷体験を意識化し、人生の一部として受け入れ、個人史の中の空白を埋める事になります。

第五段階−各人格の統合
この段階で各人格が一つの全体として統合がなされます。
この為には各人格が相互に接触して、目的の為に協力し合う事が必要で、相互の情報交換の為に日記が利用されたり、患者の心の中での各人格の円卓会議が開催されたりします。人格の融合化への過程は治療者により様々です。
全ての例において理想的な完全融合が実現するのは難しく、融合の為の様々な技法、一体化の為のイメージを利用した儀式(水や光の融合)が開発されています。
この傷の癒え方が表面的で、治療者による強制的側面が強いと、人格は再分裂してしまう危険性が高いのです。

第六段階−融合後
人格が癒え、統合した後、患者は新たに一つの人格として人生を生きて行く事を学ばねばなりません。
この段階では融合が持続しているか、また交代人格が新生していないかのモニターが必要です。
また乖離しやすい傾向、防衛への行動療法や催眠療法的な治療がなされます。
この他睡眠障害等への薬物療法や指示的精神療法(患者を受け止め恐怖等を除く技法を一般的に言う)等の副治療の併用や、入院か外来通院かの決定、患者との治療同盟の結び方等重要な治療上の問題が様々あります。
不安の強い例ではマイナートランキライザー(抗鬱剤等)の投与が有効です。多重人格患者同士の集団精神療法は好結果を生む事が多いですが、心的外傷の元である家族と患者を含んだ家族療法は心的外傷を新たに作り出してしまう危険性があり、一般的には好ましくありません。特に患者が子供の場合はそうです。
ただし患者が成人の場合、患者や家族に病状を説明した上で家族の協力が得られた方が良いのです。
いずれにしても、二重人格、多重人格の治療は長期に渡ります。
本人も家族も、主人格が判断力を持った頼りがいのある強い人格になれる様に心がけていきましょう。

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