◇シャン×チャリオットシリーズ◇
□ねえ、頑張ってるよ
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──綺麗だろう。
これが、月だぞ。
小さな頃、白い壁と、白いベッドだけが俺の世界だった。
生まれて初めて見た夜の空は、真っ黒で、広くて、キラキラ輝いていて
俺は馬鹿みたいにずっと銀色に輝く月を見てた。
首が痛くなっても、そんな事気にならない程、ただ、夢中に。
隣で笑うやさしいひとは、そんな俺の手を自分の手と繋ぎながら、
物珍しげに空を見詰めている俺を眺めて、まるで自分の事のように嬉しそうに笑うんだ。
そうして外は、こんなにも綺麗なもので溢れているんだ、と、
彼は教えてくれる。
俺は彼が大好きだった。
──ねえ、忘れないよ。
初めての月を、貴方が並んで見ていてくれた事。
我が儘言って困らせて、
隠れるようにして二人、あの牢獄から抜け出して。
そうして目にした銀色を。
あの美しい月を。
きっと俺は、死んでも忘れない。
【ねえ、頑張ってるよ】