復活 A

□七夕
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「たなばた?」
なんだそれはと眉をひそめたスクアーロが言った。
「七夕、知らねぇ?7月7日に短冊に願い事を書いて笹に吊るすんだ。そうすると書いた願いが叶うんだぜ。」
山本武がそう説明すると彼はふぅんと一つ返事をしながら不思議そうに吊るされた短冊を摘まんで見る。
そこには誰かが書いたはずの願い事があるはずだ。

イタリアにはない風習なのかもしれない。
スクアーロの仕草から山本武は直感的にそう思った。


リング戦からスクアーロは度々並盛へやって来ることが多くなった。
なぜ来るようになったのかその理由は知らないが、並盛にやって来た彼は必ず山本の家に寄ることが習慣になった。

今日もそうだ。
山本の実家である竹寿司で寛いで居た時だった。
7月の始めに並盛にやってきたスクアーロに町内会で飾っている笹竹について尋ねられた。
町の風景など大して気になどしない彼だがいつもと違う町内の雰囲気にそんな言葉が出たのかもしれない。
あまり周りに興味がなさそうなのにそんなことを尋ねられたものだから武は正直、驚いた。


「スクアーロも何か願い事書いてみる?」
「あぁ?」
「折角だし」
ハイと商店街の短冊とマジックペンを渡した。
竹寿司も漏れなく商店街に加盟している。
淡い色の紙を渡され何も書いていない紙をマジマジと見る。
「…別に難しく考えなくたっていいんだぜ?気軽にさ…」
難しい顔をしている彼に自分の短冊を手に取りながら言った。
「…」
それでもスクアーロはじっと短冊を見ている。

彼に言ったことをは勿論だが、それより本当は彼の書く願い事に興味があった。
どんな願いがあるんだろう?
綺麗だし剣も強い、彼の主の望みを叶えることが望みだと言っていたが彼自身の望みや願いは聞いた事がない。
こんな子供騙しな行事にそんな大きなことは書かないだろう、些細なことでも彼の願いを知りたいと思った。
「なんか思い付いた?」
覗こうとすると手のひらで隠されてしまう。
「お前はどうなんだ?」
逆に尋ねられる。
「俺はいつもと一緒、県大会ベスト4だぜ!」
満面の笑みと共にスクアーロに向かってやや歪んだ字列になった短冊を見せる。
「お前は野球ばかりだな」
やや呆れたようにスクアーロが言った。
「スクアーロは?」
ニコリと笑って尋ねた。
「星に願うような願い事なんかねぇよ」
答えて少しだけ歪めた笑みを浮かべた。
「何も?」
彼の答えに落胆が隠せない。
「星が何を叶えてくれるって言うんだ?望むならこの手で実力で掴むだけだぁ。」
そう答えた彼の言葉があまりに彼らしくて苦笑してしまう。
ただ願って待つような人間じゃなかった。
本当に望むなら何だってする、そして叶える、そういう男だ。
「スクアーロらしいぜ」
本当にそう思った。
「星に願わなくちゃならないような、叶いもしないような願いなんて、そんなもん願ったってしょうがねぇだろ。」
スクアーロが誰に言うわけでもなく呟いた。
その言葉が聞こえて、彼が言ったその言葉の意味を思うと胸が苦しくなった。
願っても望んでも叶わなかったことがあったのだ。
それは多分彼の主の過去の出来事だろう。
結局総ては彼の主のことにに戻る。
それが悔しいというか切ないというかなんとも言えない苦しい気持ちになる。
そんな気持ちを払拭したくて、自分の書いた短冊をスクアーロに向けた。
「じゃあさこう考えたらどうだろう」
「あん?」
「目標、こうやって書いて笹に飾って神様に見せるんだ。」
自分が書いた短冊を店の笹に飾って言った。
「俺が頑張って練習して必ず県大会ベスト4に行く。」
彼の目の前で宣言した。
スクアーロは少し驚いた顔をして俺を見てから、笑った。
「俺に言ってどうする」
「スクアーロは?なんかないのか?」
笑った彼に俺は尋ねた。
スクアーロは少し目を伏せて数秒考えてから再び俺を見た。
「俺はお前に剣の才能があると思っている」
「?」
「だから俺はお前を剣の道に引き摺り込んでやる」
いつものあのふてぶてしい笑みを向けられて言われた。
俺はスクアーロの言葉に呆気にとられてしまう。
「覚悟をしておけよ武、俺は言ったことは必ずやるぞぉ」
更に言葉を続けられれば笑うしかない。
俺もちゃんと彼の中に居たのだ。
それが何より嬉しくてたまらない。
「はは、本当にスクアーロらしいや。」
笑みが止まらない。
「神になんか誓うものか、俺に誓って必ずしてやる。」
スクアーロは凄んでみせているのに続く言葉に顔が緩んで仕方がない。
「わかってんのかぁ!?」
「うん。スクアーロが俺のことを考えてくれてるってことだろう?」
スクアーロにそう答えれば彼が少し詰まったように黙った。
「俺嬉しいぜ。アンタに近づける。」
浮かれた気持ちで答えればスクアーロは真顔で言った。
「お前はその重みを感じろよ。俺が動くと言うことがどれだけ重たい意味を持つか」
「勿論」
願ってもないプレッシャーが掛かればそれだけ真剣になれる。
「俺がアンタとのことで真剣じゃなかったことなんてねーよ」
スクアーロに向かって不敵に微笑んで見せた。


end




10000hit mina様へ
リクは武スクで、何かとのことで書いた割にはこんな毒にも薬にもならない話で本当に申し訳ない。
こんなのでよろしいですか?
ご不満でしたら書き直しますので…仰ってください。ヒン。
でもリク有難うございましたぁぁ!!!!

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