復活 A

□拍手A
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時は残酷に目の前に現れる。
銀糸の髪の毛が目の前で揺れた。
性格をそのまま表したような真っ直ぐに伸ばされた髪が存外細い腰よりも尚長くある…それが俺にとっての時間だった。
それは時の長さを見せ付ける為の行為だったのたろうか。
それとも…
意図など解ろう筈もない。多分男は過去に言った言葉を律儀に守っているだけなのだろうが…。馬鹿げていると一笑に伏した行為をただ律儀に行う男の思考など最初から理解できはしなかった。
昔から…。

「スクアーロ」
呼べば当たり前のように隣にいる近くに傍にあった。
最近は特に呼ぶことの無かった名を呼んだ。
驚いた様子もなく婉然と笑む。
その表情は昔と何も変わらない。
変わらないことに今と過去が確に続いていることが実感出来た。

癪に障った。

無言で振り向いた奴の長い髪の毛を鷲掴み強引に引き落とした。
不意を付かれた奴は無様にテーブルに顔を打ち付けた。
衝撃と共に聞こえる鈍い音とそして低いうめき声。
白い肌は赤く腫れる。
そして無様に血を流す。
奴が痛みを訴えるのを見て気が晴れる訳ではない。
逆にイライラと不快感が募るだけだ。
この不快感を満足感に変える方法は…自分の野望を実現させること、無為に過ぎた時間を取り戻すこと、この男の長い髪が以前と同じように短くなること。
見慣れない姿を消し去って過去を取り戻すこと。
「そのふざけた面見せんじゃねぇよ。」

end

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