復活

□ベル誕
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「君といると本当に退屈しないよ、全く。」
赤ん坊のおおよそ赤ん坊らしくない台詞に笑顔を浮かべてしまうの俺はきっと末期だ。
「ラッキーじゃん。」
ニシシと笑い、答える。
「おだてたって何にもでないよ。例え君の誕生日だとしてもね。」
ヴァリアーどころかボンゴレ、否、マフィア1の吝嗇家の財布の紐は鋼鉄よりも固い。
別に金銭が欲しいとは思っていない。が、なににつけてもケチな彼に何かを貰おうなどと考える方が馬鹿だ。
「知ってたの?」
食えない笑みを浮かべ、何も要らないという態度を見せる。
「大体この時期に誕生日だとクリスマスと一緒にされるだろ、それで覚えていただけだよ。」
尤もらしいような、でも理屈の解らない理由を喋る。
それが彼のポーズで、照れ隠しだということは分かっていた。だけど、それには気付かないフリをする。
ポーズにポーズで返すのが流儀だからだ。
「王子だからクリスマスと誕生日を一緒にされたことはなかったね。」
「あぁプリンスだもんね。」
王子様はいいね。と皮肉にもならない皮肉を言う赤ん坊が堪らなく愛しいと思ってしまう。
「マーモンだってクリスマス好きでしょ。」
赤ん坊だもんね、と言えば、ムッとしたように言い返す。
「サンタがプレゼントをくれるなんて思ってないよ。」
そこまで子供ではないと言い張る。
この際マーモンが本当の赤ん坊かどうかなんてどうでも良かった。会話が重要なのだ。
「王子は信じてるかなぁ…」
おどけて言ってみても馬鹿にするばかりだ。そんなことも、折り込み済み。
「意外に子供っぽいところがあるんだね。ベル。」
「そう。結構メルヘン好きだよ。」
サプライズってやつが大好きだ。
「メルヘンって歳?」
馬鹿馬鹿しいとリアリズムの塊のような赤ん坊が言う。その口調が何時になくキビシイ。
「歳とか関係ないでしょ。」
敢えて気にしない。気にしてはいけない。
「サンタを信じてるくらいの王子だから勿論王子の誕生日は祝って貰えると思ってる訳。」
何か頂戴とは言わない。物は強請ってはいけない。
「…ベルは狡いよね。赤ん坊に物を強請るんだからさ。」
嘆息気味に言われる。この答えは予想通りだから、用意していた答えを言う。
「別に強請ってなんかいないだろ。ただ素直に祝ってくれるだろうって思ってるだけだよ。」
当然してくれるでしょ?と言えば、隠れた顔の半分は呆れたような表情をする。
「ベルは赤ん坊より狡くて嫌になるね」
金は出ないよ。と念押しの一言がでる。
金なんて要らないと首を振る。そんなもの本当に欲しくはない。
ただ一言くれれば十分。
言葉くらいなら、吝嗇家の彼でもくれるだろう。何せ何も係らない。
それでもヤレヤレとため息を付きながら言う。
「お誕生日おめでとうベル。」
この一言が何よりのプレゼントだ。

終り

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