復活

□ブラックジョーク
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「あの二人っておかしいよね。」
彼がそういう「二人」について見当がつかない訳ではなかった。けれどとぼけて彼に訊いた。
「誰の話をしているの?」
「誰ってあの二人だよ。」
ニィと大きな笑みを見せて言う。
相変わらず主語が抜けている。それを指摘しようとしたら不意に彼の腕が僕を抱えた。
「何ベル、窮屈だよ。」
「そんなに絞めてないよ。」
びっくりするじゃないかと言えば、彼の表情の見えない顔が近付いてくる。
「やっぱり変だよね。」
「ベルまた主語が抜けてるよ。」
「マーモン理屈っぽいマジウザイ。」
不満を口にしても彼は僕を自由にしてくれる気はないみたいだった。溜め息をひとつ吐いて、仕方ないから会話を続けることにした。
「…ボスとスクアーロのどこが変なの?」
「言わなくったって分かるじゃん。変だよ変。」
小さな僕に鼻を擦り付けるように抱きすくめる。僕は窮屈でしかたがない。
「ねぇベルちゃんと僕と会話する気ないの?」
「あるよマーモン。」
悪びれない彼の返答に僕はもう一度言う。
「じゃあちゃんと解るように喋ってよ。」
促してやっとベルは話し出す。
「だってさ、変じゃんか。好きなら好きって言えばいいのに。ボスもスクアーロも。ボスは殴ってばっかで何にも言わないしスクアーロは殴られて、何も言わないんだぜ。頭がオカシイんだ。」
僕を片腕で抱えながら空いている片方の手で頭を指差しくるくると回した。
「そんなの君がどうこう言うような事じゃないだろベル。」
「そう?でもあんな馬鹿みたいな事をするならもっと他の方法を考え付かないかなと思うよ。」
ベルはそう言って歯を見せて笑う。ニシシと声を立てて。
「それこそ君が言えた立場じゃないだろ。」
双子の兄を殺した人間が言うことじゃないと思うよとベルに言えば、ベルは愉快そうに(ベルが愉快そうでないときの方が珍しいが)ケタケタと笑いだした。
「殺しも出来ないんだよ。そのくせ抱き合うことも出来ないなんて!マーモン俺らのボスはもしかしたらとんでもないキチガイか、とんでもない馬鹿かもしれないよ?」
クスクスと笑う声が頭の上からする。ベルが結局何を言いたいのか解らないけれど、ボスが近くに居なくて良かったなと思って(今の話を聞いたらきっと殺されているに違いないボスをチキン呼ばわりしたようなものだから)でも僕はベルに極当たり前の事をいう。
「キチガイは君の専売特許だろ?スクアーロの扱いなんて、どのみち僕らには関係ない事じゃないか。ベル、僕らのボスはあの人で僕は金儲けだし君は快楽殺人者で…ヴァリアーに凡人なんて必要ないんだよ。」
「マーモン」
突然名前を呼んだりして人の話を聞いていたのかいないのかさっぱり解らない。
「何?」
「スキだよ。」
何を言っているのか、一瞬分からなくてベルを見上げてしまった。見上げた先には意地の悪いベルの笑み。
「こんな簡単な事なのにね」
「君の方がオカシイんじゃないかい?」
皮肉を込めて言う僕を両手で抱えてベルは笑った。



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