復活

□掌
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大人になったら、もっと強くなれるんだろうか。

綱吉の手は小さい。方やランチアの手は綱吉の手の二倍はあろうかと思うほどの大きさだった。
綱吉はそっとランチアの手を取り自分の手と重ねてみる。
何の断りも無く掌を握られたランチアはどうした?という視線を綱吉に向けはするがあえて言葉にはせずに、綱吉の行動を注視していた。ランチアの手を空に向けて広げるとその上に自分の掌をペタンと乗せてみた。重なり合った手の大きさは明白で武骨で肉厚な掌に柔らかで小さな手が見事に収まってしまっていた。ランチアの掌の中では綱吉の手はまるで紅葉のように小さく見えた。
その変えられない事実に綱吉は少し眉を顰めてそして大げさにため息を吐いた。
その姿を一部始終見た上でランチアは綱吉に問いかける。
「どうかしたか?」
綱吉はハッとしてランチアを見上げ顔を真っ赤にした。
ランチアには綱吉の反応は理解できないものに映り逆に瞠目した。
「あ、ごめんなさい。」
次の瞬間綱吉の口から飛び出したのは謝罪の言葉で綱吉本人は酷く慌てた反応だった。
わたわたと乗せていた掌を離しさっと自分の背に紅葉の手を隠してしまう。
「?」
ランチアにはますます理解できずに訝しげに眉を顰めてしまい、それが綱吉を一層慌てさせた。
「ごめんなさい、いきなり手とか勝手に乗せちゃったりとかして・・・・俺、あの、ランチアさんと俺、ぜんぜん違うから、どうしてだろうとか、ランチアさんみたいになりたいなとか、思っちゃって、それであの、手を、あ、手が一番比べやすいかなって、思って俺、勝手に!」
捲くし立てるように綱吉が言うのをゆっくりと制してランチアが言った。
「解った、もういい、だいたいのことは理解した。」
慌てて弁明しなくてもいいと大きな手で綱吉の頭をゆっくりと撫ぜると掌が柔らかな髪の毛の中に埋もれてしまう。
ランチアにとって少し撫ぜただけでも、綱吉の小さな頭はすっぽりと掌に納まってしまい綱吉には頭を掴まれてしまっているような感覚になってしまう。でもそれは決して嫌な感触ではなくて、むしろ安心できるような、そんな感触だった。
「俺、ランチアさんみたいになれますか?」
犬が飼い主に頭を撫でられるような、父親に褒められた時のようなくすぐったい気持ちのいい思いを抱きながら綱吉は呟いた。
「今はこんなに脆弱でも大人になれば貴方のように強くなれますか?」
綱吉はランチアを見上げる。その大きくてつぶらな瞳には強い輝きが宿っていた。
「体力や腕力だけが強さとは限らない。」
言われた綱吉が逆に瞠目する。ランチアはニヤリと不敵に笑い言葉を続けた。
「どんなにガタイが良くても、腕力があっても強い意志と信念が無ければ人は弱い。」
綱吉は一言一句を聞き漏らすことが無いようにとランチアの言葉に注意を向ける。この基本姿勢はあのアルコバレーノの教育の賜物だろうか。
「体は作りやすいし、体力が無ければ補う武器を持てばいい。それよりも重要なのはそれを使う意志だ。ファミリーのドンに最も必要なのは体力でなく知力と意志、そして優しさだと俺は考える。」
ただひたすら純粋に聞き入る綱吉を下に見、ランチアはこの小さなボスに言った。
「ボンゴレ十代目、俺はお前にはお前らしい強さが備わっていると思う。だから、大丈夫だ。」
向けられる瞳に輝きは失われていない。あの時、この小さな少年と戦い敗北した時このつぶらな瞳の強い輝きこそが意志の強さだとランチアは知っている。
今もってそれは変わっていない。ならば、大丈夫だとランチアは心の内で確信する。
綱吉はぎこちなく、しかし柔らかく微笑んだ。とても不慣れな様子だったけれど。
「ありがとうございます。」
初めて少年の口から消え入りそうな小さな声ではあったけれど感謝の言葉が紡がれた。
ランチアは彼の頭を押さえ付けるように少し力を入れて乱暴に撫で回す。
「安心しろ、ボンゴレ。お前は立派に強いのだから・・・。」
それは、ランチアの小さなボスへのささやかな励まし。

終了

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