復活

□共犯
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白い包帯が巻かれた左手は、失い、手に入れ、そして守った象徴。


彼は左手を落とした。
その指先は永遠に繋がれることはない。
繋ぐ必要などないと彼は一蹴し、きっと笑うだろう。

白く巻かれた、彼の腕を見ていると、
嗤ったまま、くれてやったのだ、と彼は言った。
古き象徴に餞として。
そして、誰にも束縛されないと、笑った、プライドと誓い。
自らの身体が欠けても 自由を 彼は求めた。
彼は失ったものを、悔やんではいない。
むしろ誇りに思っている。

落とした手、その代わりに彼は髪を伸ばした。
長く、長く、長く・・・補うかのように。
「その時」が来るまで、と。
果たして「その時」が来たとき彼はどうするのだろう?

そして、
「誓え。」
といって向けられた瞳は言葉より雄弁に語り、きつく尖った視線は彼の性格を表していた。
嗤ってやった。
「何に誓えと?」
神もキリストも最初から信じちゃいない。
そんなものに縋るくらいなら唾を吐いてやる。
しかし
「自らに誓え。」
と勝気な瞳が言った。
俺は喉の奥で笑い頷いてやった。
そして俺たちは密やかに契約を交わした。

笑えるほど馬鹿げたことでもなければ、真面目に語るほど、シリアスでもない。
密約

「面白そうだ。」
と彼は呟いた。そして、くつくつとのどの奥で笑った。
「剣以外で面白い事を見つけるとは思わなかった。」
実に楽しそうに彼は言った。
瞳は爛として、口元は不敵に上がる。
「覚えておけ御曹司。」

「俺は必ず役に立ってみせる。」

彼の瞳には自分自身への自信と誇りが宿る。
それを見て俺は笑う。
密約は詭弁だ。
彼の左手の代償が自由なら
彼自身の身体の一部で俺は奴を捕まえたのだ。


誰も出来なかったことを俺はしてみせる。
あの老い耄れどもには出来なかったことを。

終わり

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