鳴戸

□ベクトル 2
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アイツは何時も笑ってた。
だから嫌いなんだよ
嫌い
ああ、そう言えばアイツの煙草も嫌いだ。
人生の全てを知っているようなシニカルな笑み(俺にはそう見える)
癪に障る
でも俺よりは確かに長く生きていて
その生きた長さは決して無駄ではなくて
何かしらを教えるものに成ったんだろう
生きるって多分そう言う意味だろうから
そうしてアイツはアイツの人生経験からものを語る
俺には理解できない(そうだ俺は奴の人生など一部しか知らない)
それでもアイツは俺に語るのだ
それは押し付けがましいものではない
年長者が話すような極自然な話し方、
でも格言みたいに俺には聞こえる。
俺はその言葉に関心が無い
だってそれは俺にとっては不必要な言葉の羅列なんだ
アカデミーで聞く不必要な講義のような
それ自体にはきっと意味があるんだろうけど
俺には退屈で無意味なもの
アイツの話しはそれと良く似ている
確かに意味はあるんだろう
言う言葉の意味は理解できるけど
俺には役に立たない話しなんだ
俺とアイツは余りにも価値基準が違いすぎて
奴のベクトルと俺のベクトルは違う方向に伸びている
それでもなんでアイツは俺に話すんだろう



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