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□無題 B
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「お前さ、最近冷たいよな。」
檜佐木修兵が阿近の為に激務の合間にどうにか捻出した貴重な逢瀬にわざわざ言われたのはそんな理不尽な言葉だった。
「阿近、今がどういう状況なのか解って言っているのか!?」
修兵は安穏と言う阿近に向かって怒号を飛ばした。
今尸魂界護廷十三隊は隊長格が三人も抜けるという未曾有の事態なのだ。空いてしまった部隊の中には修兵の在籍している九番隊も入っている。修兵は副隊長として負わねばならない責務や仕事がかなり増えた。今だって本当ならやらなければならない仕事が山程ある。それらをどうにかやりくりして間を開けてやっと会いに来たと言うのに何故そんな事を言われなければならないのか、理不尽な言い分に修兵は怒り心頭だった。阿近は激昂する修兵を横目で見るとポソリと言った。
「お前、浮気してるだろう?」
言われた言葉に修兵はとうとうブチ切れた。今、この男は一体何を聞いていたのか?ありもしない疑惑を賭けられて目の前が真っ赤になる。怒りにカチャリと腰に帯刀していた斬魄刀に手をやった。
「打った切ってやる!」
「うっわー。」
ひゅんと鳴る副隊長の斬撃を開発局の職員いわゆる裏方がどうやって避けたのかは解らない。人の本能の成せる技だろう。
阿近の股の間に突き刺さった斬魄刀とその先には疾風のような撃は床をパックリと割れていた。真っ青になりながらも阿近は続けて主張した。
「だってよ!お前最近狛村隊長とよく一緒にいるじゃないか!」
「は?」
突然出てきた人物の名前に修兵は怪訝な顔をした。
確に前九番隊東仙隊長が懇意にしていたせいもあって仕事上どうしても七番隊隊長こと狛村左陣には様々な助言を貰っている。自然と接する時間も増えてはいるだろう。けれどそれがどうして浮気に繋がるのか修兵には皆目理解できなかった。
「狛村隊長とは仕事上の付き合いがあるだけだ。」
「嘘を付け!!俺は知っているんだぞ!!」
阿近まるで浮気現場を押さえたような強い口ぶりだった。言われた修兵にはやましいところなど一点もないのだから何を馬鹿な事を…と頭を振るしかない。
「お前が筆責めが好きなのを!!」
「お、おまっなっばっ…!!!」
阿近の言葉に修兵は真っ赤になってブルブルと震え出す。怒りと羞恥心で修兵の頭は変になりそうだった。そもそも狛村隊長とハレンチなプレイと一体どこに繋がりがあると言うのか。
しかし修兵の様子を気にも留めずに阿近は続けた。
「柔らかい筆でお前の弱いところを撫でてやるとイィ顔してヨガッたじゃないか!!」
いつだったか興味本意で阿近が修兵にした悪戯だ。案外反応が良くて阿近は悪ふざけをしすぎ感じ過ぎた修兵が泣いてしまったのを阿近は思い出してはニヤついた。
ゴッ
修兵は容赦なく阿近を本気で殴った。渾身の力を込められた拳を受けた阿近は軽く宙を飛んだ。ガタンと大きな音を立てて板間に倒れた。ぐったりと倒れたままの阿近に座った目を向けた。
「黙れ。」
腹の底から唸るような声を出した。白昼言われて嬉しい訳がない。いや白昼でなくても言われたくない。しかし阿近も負けてはいない。研究者は根性と忍耐が必要なのだ。ぐったりと重い体を起こして言い張った。
「狛村隊長は…あの成りだし…お前絶対あの感触は好みのはず…。」
だから間違いがなかったとは言わせない。阿近はそういいながら自分の言ったことを想像する。
左陣のあの獣じみた(実際狛村の頭は狼だ)鼻先が修兵のよく鍛えられた体を這うように動く。際どい所を擽られ感じ眉をきゅっと悩ましく寄せる。きっと鼻を擽り大きな口でかぶりつくように赤い舌で胸の突起を潰すように愛撫され、修兵は息を弾ませ快楽を受け流すのに苦労しただろう。舌だけではない左陣は獣の顔部を持っているのだ顔中の柔らかい毛に擽られ感じいった筈、あらがい難い快楽に紅く頬を染まらせ潤んだ細目の瞳からはきっと涙が溢れるに違いない。そしてきっと最奥を貫かれることなく絶頂を…。自らの放った白濁に汚れ、喘ぐ修兵の媚態。
思い描いただけで阿近はぞくぞくと快感に体を震わせそれに反応している下半身は熱く猛っていた。
「やっぱ狛村隊長は良かったか?」
ムラムラしまくった阿近に修兵は別の意味で顔を真っ赤に染めていた。
「阿近、最期に言い残す言葉はそれでいいか?」
怒りに目が血走った修兵はユラリと斬魄刀を抜いていた。確実にさっきの比でなく殺る気だった修兵には迷いはない。スッと抜かれた刀芯は阿近の首元に置かれた。
「しゅ、修兵?」
おい待てと止める余裕はどこにもなかった。スゥっと細められた瞳には未塵も容赦などという言葉はなかった。
「その口二度と開けないようにしてやる。」
振り上げられる斬魄刀。
「ぎゃぁぁあああっ!!」
最期の断末魔のあと官舎は耳が痛くなるほど静まりかえった。

終り

妹君に捧ぐ。
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